簡易保険絵葉書「保険金嗤った奴が借りに来る」 一橋大学 米山高生名誉教授 ⑪
2025.07.28
「かんぽ」の前身の簡易保険は、庶民のための小口の生命保険であった。主力商品は養老保険だったので、契約者にとっては満期保険金という「楽しみ」があった。
普段、「保険なんか掛けても意味がない」と保険を嗤っていた人が、金策に困って、満期金のおりた人にお金を借りに来たという趣向の絵葉書である。
満期保険金=生きられた喜びも
どんな人でも満期保険金はうれしいものだが、ただお金が給付されるというだけではない。保険期間中に死亡したら死亡保険金が出て保険契約は終了するので、満期保険金が出たということは、保険期間中を無事に生きていられたということでもある。その意味では、二重に慶賀すべきことだ。
漫画では、恰幅のよい主人が、火鉢を前に、キセルを吹かして悠然としている。そしてその背後に、大きな金庫があって「保険満期」と書かれている。
お金を借りに来た人は、過去の発言を恥じ入っているのか、頭に手をやって、お願いをしている様子が伝わってくる。見事な筆遣いの漫画で、「八公」という署名がある。
残念ながら、不勉強で漫画の作者名が分からない。日本の戦前の漫画の歴史に詳しい方がおられたら、ご教示いただけたら幸いである。