続・続 郵便局ネットワークの将来像㊸
兵庫県三木市別所町にある単マネ局の三木局(藤岡豪局長)は神鉄粟生線の志染駅から徒歩15分ほど。今、同局では地元の名物、松山製パン(松山敏郎社長)のおいしさ詰まった出来たてパンの無人販売が人気を呼んでいる。完売の日も多い。局入り口から窓口に足を運ぶ瞬間、パンの香りがほんのり漂う新しいムーブメントの背景には、ぽすちょこ便提案をきっかけとする単マネ局とエリマネ局の絶妙なる連携プレーがあった。(写真上は三木局の緒形さん)
単マネ×エリマネの共創プレーも
ぽすちょこ便は、ポストと郵便局を回る郵便取集車の余積スペースに荷物を載せて近くまで安価に配送するサービス。農産物等をほぼ当日中に差し出しと受け取りが完結できる。
山形県鶴岡市内15局で2023(令和5)年9月から始まった際に、5年後の28年をめどに全国約160地域での横展開や買い物支援への応用が目指されていた。郵便局のネットワーク力を使って積み上げていけば、経費をさほどかけずに収益増や地元産業との共創が深化できる可能性も秘めている。
昨年4月、三木局前局長のぽすちょこ便の拡大方針を受けて動き出したのは、同局社員で集配営業部グランマイスターの緒形友雅さん。
緒形さんは昨年、やる気満々の営業1年生。「当時の局長が周辺のエリマネ局長の方々に『新人なので面倒見てあげてください』と声をかけてくれたおかげで、エリマネ局に伺うと、どの局長さんも快く親身に地域の状況を教えてくださって『社長さんを知っているから紹介しようか』などと助けていただいた。他の営業社員と話すと、エリマネ局と関わりのない人もいて、僕は恵まれていると思った」と目を輝かせる。
地元企業に次々と当たる中、最初にぽすちょこ便検討の俎上に載ったのが松山製パンだった。緒形さんは「『安いから使ってください』ではなく『お客さまの商品販促に役立ちますよ』と、先方の話を聞くように言われていたので『パンの販売店を増やしませんか。郵便局で』と、ぽすちょこ便と局の無人販売をセットで提案した」と振り返る。
もともと、松山製パンを紹介したのは兵庫県播磨北部地区連絡会(隂山直敬統括局長/滝野河高)のエリマネ局、三木湯の山街道局の衛藤裕子局長(写真上)。
衛藤局長は「松山製パンさまはうちの局のお客さま。結果的にぽすちょこ便より、パン販売拡大が先行実施となったが、うちの局はパン屋さんが近い。部会長の三木青山局(岸本修一局長、写真下)は周辺にパン屋がない住宅地なので無人販売にぴったり」と喜びを見せる。
緒形さんは「ぽすちょこ便の場合、通常の郵便・荷物類を運ぶついでのため、配送ルートを変えるのは難しい。松山製パンさまは各小学校へ給食パンを午前に届けた上で三木局に昼までにパンを届けるのは時間的に難しく、毎日出来たてを届けたい松山製パンさまの信念に即し、配送はぽすちょこ便を使わずに無人販売を先行することになった」と語る。
6月2日にパンの無人販売を開始したエリマネ局、三木青山局の岸本局長は「松山製パンの社長と専務の方々も局にいらっしゃった。野菜であれば駐車場入り口等に置けるが、パンは局内でなければ難しく、広くない局で販売スペースは工夫を凝らしたが、地元企業の方に郵便局を活用されることは多くのお客さまが局に足を運んでくださるきっかけになる」とうれしそうに話す。
単マネ局と細やかに地域ニーズを拾えるエリマネ局の連携プレーはさらに進む。現在、三木湯の山街道局長が紹介した稲見酒造(稲見秀穂社長)がぽすちょこ便での酒粕配送を検討中だ。当初、酒瓶が検討されていたが、ぽすちょこ便配送に使われる郵便用の台形Pケースは酒瓶に適していないとの判断だった。緒方さんは「ほんの少し工夫や改善を重ねられれば、さまざま応用が利くと思う」と夢を膨らませている。