簡易保険と庶民の健康 一橋大学 米山高生名誉教授 ⑦
2025.03.23
簡易保険とラジオ体操の関係は一般によく知られたことである。それが戦時体制に向けての潮流に即したものであることは否定できないが、兵役の可能性のある男児に限った運動ではないことから、人々の健康増進のために果たした役割は無視できない。
契約者は「簡易保険医」で「特別の安い料金」で治療
簡易保険と国民の健康の関係はラジオ体操だけではない。簡保加入者に対する医療サービスを提供していた。
「健康の保護施設 全国主な都市に設けられた簡易保険健康相談所では、被保険者のために無料で診察や訪問看護を致しております。又健康相談所を設置されてゐない地方には時々医者を派遣して臨時の健康相談所を取り扱っております。」(出典:「小さな掛金、大きな安心」簡易保険局)
さらに、病気やけがなど医療を必要とする契約者は、契約受持郵便局か健康相談所から診察券を受け取った後、最寄りの「簡易保険医」あるいは「簡易保険歯科医」で、「特別の安い料金」で治療が受けられることになっていた。
健康相談所のない地区における巡回出張所の案内のチラシを掲載しておく。大都市だけではなく、地方にも行き届いたサービスに努めていたことが伺われる。