生きる!地域と 山口県周南市
防災士の資格を市民のために生かしたい――山口県周防西部地区会(福田信一郎会長/徳山櫛浜)の前田貴典局長(徳山有楽町)と植木新局長(徳山周陽)は、周南市防災アドバイザーとして、2012(平成24)年7月から講演や家具転倒防止器具の取り付けを実施。「しゅうなんFM」のパーソナリティーも務め、市の防災力向上に一役買っている。(写真上は植木局長㊧と前田局長。取り付け用の工具や金具を手に)
「市防災アドバイザー」で12年講演
前田局長が市防災危機管理課のドアを叩いたのは約13年前。防災士になったはいいが、一体何ができるのだろうと思いあぐね、とにかく市と相談しようと飛び込んだ。「市民の皆さんを巻き込んで、市と〝チーム〟で防災に取り組みたい」との前田局長の熱意に触れ、当時の課長も「いいじゃない、やろうや」と賛同。両局長が防災アドバイザーを委嘱され、取り組みが始まった。
防災講座を自主防災組織のほか、幼稚園から高校まで市内全域で展開し、避難所運営訓練も行う。参加者からは「自助・共助の必要性が理解できた」「家具転倒防止器具の取り付け方が分かりやすかった」「想定外をつくらないという話が心に残った」など称賛が寄せられている。
植木局長は「防災士の資格は取得して終わり、ではないと思う。今すごく楽しく、やりがいがある。市民の皆さん、特に子どもたちを守りたい」と意気込む。
家具転倒防止器具設置、ラジオ出演も
両局長が提案し、災害時要支援者宅への家具転倒防止器具取り付け事業が予算に組み込まれた。地元の自主防災組織を通じて市が要望を受け、器具を3点まで無償で提供。防災アドバイザーが自主防災組織の方と訪問し、壁や天井の材質、家具の配置などを確認し、対話をして納得いただいてから作業を行う。
植木局長は「ただ取り付けるのではなく、一緒に行うことで防災力の向上につながる。我々が行かなくても、地域でできるようになる。ラジオ番組では、その担当月に起きた災害の教訓を生かし、失われた命を無駄にしないとの思いをお伝えしている」と強調する。
2人で始まった防災アドバイザーは現在、山口県消防クラブ連合会の松村育美会長ら7人に拡大。市と定期的に協議を重ね、施策の拡充を図っている。
同課の白井朋希さんは「お2人が先頭に立っていただき、防災を身近に感じる市民の方が増え、自主防災組織も活性化してきた」と期待を寄せる。
前田局長は「災害で親を失った子や子を失った親の話も聞くが、他人事ではないし運命という言葉で片付けられない。そんな運命に抗えるんじゃないか、一つでも救える命があれば、との思いで臨んでいる」と力を込める。
両局長は、全国で防災に奮闘している局長の仲間とも思いを共有していけたらと話していた。局長の方々の強固なネットワークは、地域を守り、命を守る砦となるに違いない。