わかやまLIFE 進化形創造へ 移住・定住相談、郵便局が地域案内
デジタル化が急速に進む中、逆にほのぼのとした空気感が求められ、ファッションも住まいも昭和レトロが社会現象になってきた。生活インフラとして最重要な住まいも自然豊かな地への回帰ニーズが高まる。今春、多くのマスコミに報じられた「郵便局×和歌山県」の移住・定住相談サービスの郵便局長による〝地域案内〟は県の期待も込められている。地域の風物や生産物を生かす郵便局の存在意義に直結する貢献を、ボランティアだけにとどまらず継続できる形も検討されている。移住相談者の方が思わず「住みたい!」と思える県ユーチューブチャンネルへの局長登場も準備中だ。(写真は「わかやまLIFE」の冊子から)
話に花咲かせられる拠点に
生活インフラ創造を発信
和歌山県への移住に関する情報を提供するポータルサイト「わかやまLIFE」には「郵便局は地域の金融機関、物流拠点として人々の暮らしを支える欠かせない存在。地域住民の交流の拠点としての顔も併せ持ち、話に花を咲かせる光景も珍しくありません」と記されている。
空き家率全国1位の和歌山県は、全国移住希望地ランキングでもトップクラス。県内に空き家バンクは少ないが、登録件数も増え、2023(令和5)年度は過去最高となった。3月にスタートした「郵便局×和歌山県」の移住・定住相談サービスは、定住希望者から「わかやま移住・定住センター」に相談があるごとに県が「郵便局」や「地域おこし協力隊」などいくつかある相談窓口に振り分ける。
21年4月に和歌山県と県内局は包括連携協定を締結している。
県との窓口役を担う和歌山宇須局の野尻勝大局長は「締結時に県の地域振興課からの『県内263局ある郵便局にも移住相談者に地域情報を話してもらえるとありがたい』という提案がきっかけ。郵便局もPRになる。『県のサービスを広く周知する良い方法』を相談された際に、三つ折りで返信用はがき添付の年賀状DMをモデルに、類似の空き家相談DMの作成、タウンプラスとしてエリア全世帯配布を提案し、実現したのが協定締結1年後。会社の収益にもなった。現在、県が保有する地域の魅力を発信するユーチューブチャンネルに局長たちが登場する準備も進めている。相談者の方が移住のヒントをつかめる一助にしていきたい」と意欲を示す。
奈良県生駒市内の郵便局では集配社員がタブレットで写真を撮る「空き家調査」が行われているが、和歌山県の場合は郵便局長による「地域情報案内」。「わかやまLIFE」の「MEET」をクリックすると、郵便局長が「私のお勧め」と題するコメントや観光スポットを紹介。
(左から)西岡統括局長、野尻局長、井谷局長
和歌山市地区連絡会(西岡久生統括局長/和歌山加納)のほか、和歌山県紀北地区(葛原良昭統括局長/隅田)、和歌山県紀央地区(野村英雄統括局長/御坊塩屋)、和歌山県紀南地区(南方慎一朗統括局長/新宮中央通)の和歌山県下4地区連絡会から8名の局長の移住・定住サポーターが輩出されている。
和歌山市地区は「地域の生活インフラをつくらなければ町が寂れ、郵便局も廃れていく。移住を希望する方々の物件案内は不動産業者の方の仕事だが、郵便局は地域情報全体を案内する役目。重要文化財級の建物を民泊や喫茶店にする古民家ブームの動きもあり、力を入れる市町もある。県と同じ思いで地域の皆さんと一緒に盛り上げていきたい。将来的にビジネスとして成り立つよう、より協力できる体制がつくれれば」と期待を込める。
和歌山小倉局の井谷敏通局長(和歌山県・和歌山市地公体担当)は「東京・有楽町にある〝わかやま移住定住支援センター〟の東京窓口には多くの方が訪れていると聞き、和歌山への関心の高さが伺える。一方、郵便局では地元を知り尽くす局長一人一人が地域の力になりたいと、善意のもとでやっている。声を掛けていただいた際には懸命に情報提供する思いだ。何よりありがたいことは、県の方が常に『できる方向で進めよう』『協議しよう』と否定されないこと。提案しやすく、さまざまなことを聞いてくださる」と語る。
今後の展開が待ち望まれているようだ。