決算会見 自治体の役目は郵便局が

2023.06.08

 日本郵政グループは5月15日、2023(令和5)年3月期決算を発表した。記者会見では、24年3月期の見通しや郵便局統廃合の報道に対する質問が相次いだが、日本郵政の増田寬也社長は「郵便局ネットワークはさまざまな事業の基盤。経済合理性だけで整理するのは取るべき道ではない。マイナンバーカード交付事務も法改正で間もなく可能になる(6月2日に成立)。今こそ自治体受託業務拡大など公共サービスに取り組むべき時だ。積極的に自治体や地域の企業に働き掛けをする」と明言した。

積立投信リアルで1番に
前向きに提案できる環境を

 ゆうちょ銀行の池田憲人社長は「積立投信では郵便局と一緒にリアルな銀行の中でナンバーワンになろうと今期はスタート。国が懸命に取り組む長期・積立・分散投資の『つみたてNISA』の裾野を拡大したい。投資信託では5月9日から大和証券とのファンドラップも提供開始した」と意欲を示した。
 かんぽ生命の千田哲也社長は「前向きにお客さまに向き合い、提案できる拠点が増えてきた。最前線と本社の距離を縮める新体制も開始。人材、マネジメントの成長を通じ、モチベーション含めて改善を促進することで、〝選ばれる会社〟に成長したい」と語った。

増田社長 確実に地域に存在できる形の確立を
公共性と物販(コンビニ的な)役割も

 (以下、記者団からの質問と増田社長の発言)
 ――日本郵便の経営環境が厳しい業績予想を前提に、郵便局ネットワークに対する問題意識とは。
 増田社長 郵便局ネットワークはさまざまな事業の基盤で、価値向上は常に重要な課題。閉鎖は自治体や住民の方々の不安もある。将来も確実に地域に存在できる形を確立し、不安を払しょくするためにも、業務範囲の拡大に取り組むべきだ。ネットワークの水準は人口動態や技術革新を十分に注視し、考えていかなければいけない。経済合理性だけで郵便局ネットワークを整理するのは取るべき道ではない。
 マイナンバーカード交付事務も間もなく法改正で可能になる(6月2日成立)。ネットワークを使って地域をどれだけ活性化できるか、地域から撤退する物販(スーパーやコンビニ)・金融、自治体支所などの事務等、公共性や準公共的な業務にこれまで以上に取り組み、地域になくてはならない存在になりたい。公共的な価値の高い存在になるため、社内や関係者で知恵を出し、積極的に自治体や地域の代表、企業の方々に、一緒にやりましょうと丁寧な議論を働き掛けていきたい。

 ――話し合いの場とは、例えば総務省や小規模自治体とですか。
 増田社長 まずは自治体と郵便局で扱える業務拡大を話し合いたい。自治体も職員が減り、支所も引き揚げる動きの中、郵便局が公共的な役目も担えると実感いただけることを進める。また、コンビニ的な物販の模索もしなければならない。そうした協議を先行した上で、しかるべき時に考えていけばよい。

 ――さまざま実施した上で2040年をめどに、統廃合に舵を切る考えですか。
 増田社長 郵便局ネットワークは都心部だけでなく、全国展開に価値がある。コンビニがある地域もあるが、公共的な業務を取り扱えるのが郵便局。受託業務を徹底して拡大するしかない。公共性が高まれば存在価値も高まる。初めに統合ありきではなく、2040年を区切りにやることでもない。

 ――次代の経営層には、どうつなぐべきと考えますか。
 増田社長 グループの資本関係は薄れていくが、郵便局を核とするゆうちょ銀行とかんぽ生命の形は続くため、どのような経営者であっても精神は受け継がれていくと思う。

 ――業績予想で郵便・物流事業330億円の赤字を見込む要因を。
 浅井智範常務執行役 大きく三つ要因があり、①春闘以降に上げた人件費②荷物の国外の譲渡委託費増③コロナで一時停止していたシステム更新や物価上昇等――の影響がある。

 ――今後の集配拠点網をどうすべきと考えますか。
 増田社長 千葉県市川南局もその一つだが、大きな地域区分局、荷物専門の郵便局を各地に配置する。「20244年問題」をクリアする意味では、営業拠点の近代化や協業各社との共同配送、ドライバーの休憩施設等も整備する働き方改革も対応したい。投資を行い、効率ある物流の確立に取り組みたい。

 ――出資先の楽天グループが3000億円規模の公募に向けて調整中と報じられたが。
 増田社長 いろいろ戦略を持たれるため、実行していただければと思う。

 ――中期経営計画の目標に対する決算の進ちょくは。ゆうパック増にエリマネ局窓口の営業力を生かすお考えはありますか。(郵湧新報)
 増田社長 ゆうパックは2025(令和7)年度に13億6000万個を目指していたが、22年度は9億8000万個となり、今期は10億60000万個まで伸ばそうと定めた。佐川急便やJP楽天ロジスティクス等との協業の数も入っているが、営業強化は必須。窓口の皆さんにもお声掛けをお願いし、取り組んでいただいている。今年度は中計の中間年として進ちょくを検討する年だ。さまざまな視点で中計と現状とのかい離を整え、後半の達成に向けて努めたい。