日本郵政G新体制へ グループ一体を武器に

2023.05.11

 日本郵便とかんぽ生命は4月19日、6月の株主総会後の社長交代を発表した。日本郵便の衣川和秀社長の退任に伴うもので、日本郵便の新社長に千田哲也かんぽ生命社長、かんぽ生命の新社長に谷垣邦夫ゆうちょ銀行副社長が就任する予定。改めてグループ一体を強みとする戦略と見られる。21日には本社前島ホールで3氏の記者会見が開催され、衣川社長から激動の3年間を乗り越えてきた思いや、千田次期社長と谷垣次期社長から、かんぽ再生に向けた営業連携、現場との対話の必要性等が強調されたほか、相続や介護、健康をテーマとする郵便局らしい温かな新サービスへの展望も語られた。

かんぽ再生・成長へ

 衣川社長は「就任以来、最大の課題は信頼回復や社風改革。これらの課題対応は定量的に評価が難しく、継続的に取り組むべき意味では道半ばだが、土台の構築は一定程度できた」と振り返った。
 千田次期社長は「かんぽ生命の再生・成長は日本郵便の強固な協力関係なしではできない。郵便局を回り、対話を通じて課題解決する組織風土とコミュニケーション改革に全力で取り組む」と強調。
 谷垣次期社長は「指名委員会から『営業建て直し』の要請を受けた。持続的成長への再生が私に課された使命。日本郵便をはじめ、グループ各社との連携協力を深める。郵便局ネットワークの資源も生かしたい」と意欲を示した。
千田次期社長は「コンサルタントの皆さんは今、相続含めた終活の社外認定試験を受けている。かんぽ生命だけでやった方がよいのか、グループ挙げて郵便局と一体でできるのなら素晴らしいサービスになる」とも語った。

衣川社長  信頼回復の土台築き、バトン託す

千田次期社長 郵便局らしい温かな新サービスも

谷垣次期社長 かんぽ営業の建て直しが私の使命

 衣川社長 65歳は年齢的に一つの節目で、また今年度が中期経営計画「JPビジョン2025」の見直しの年でもあり、持ち株会社の増田社長ともご相談した上で判断した。
創業以来最大の危機となったかんぽ生命の不適正募集問題に始まり、新型コロナにより郵便局業務運行への大きな影響、ウクライナ紛争の国際郵便の輸送困難、数十年ぶりの物価上昇への対応など、これまでの前提が覆る中で種々の課題解決に迫られた3年余りだったが、精いっぱい取り組んできた。お客さまのため、社員の皆さんのために力を尽くして千田新社長にスムーズにバトンタッチできる環境を整えたい。
 千田次期社長 今年はかんぽ生命にとっての正念場の年。全社員一丸となった努力により、将来を展望できる兆しが少し見え始めたタイミングで社長を交代するのは残念な気持ちだが、指名された重みを受け止め、覚悟を持ってお受けしたい。谷垣新社長と共に協力関係をさらに進め、お客さまに喜んでいただけるサービスを提供していきたい。
谷垣次期社長 不適正募集の判明以降、日本郵政グループでは経営陣を筆頭に募集品質改善に取り組んできた。その改革路線を引き継ぎ、日本郵便をはじめ、グループ各社との連携協力を深めてお客さまの信頼を回復し、かんぽ再生に取り組む。責任の重さに身の引き締まる思いだが、全力を挙げて取り組んでいく。
(以下、記者団からの質問)

 ――日本郵便新社長として、かんぽ生命との協力関係をどう構築しますか。
 千田次期社長 お客さまにとってはコンサルタントだろうが、窓口だろうが関係ない。お客さまのためのサービスを提供できているか否か。今回の渉外再編で溝や垣根は絶対に作りたくない。
かんぽ生命は郵便局の保険。郵便局の中にコンサルタントも入らせていただく。窓口社員がコンサルタントをバックアップする関係のさらなる構築が第一。両社にはそれぞれ協業する会社もある。かんぽ生命は職域に本腰を入れるが、その際にはさまざまな人間関係が重要だ。両社間で協力いただくことが、かんぽ生命再生の道を開く。

 ――組織風土改革と新規契約者数増への取り組み方針を。
 衣川社長 さまざまなことに取り組み、形もできつつある。成果は道半ばで苦労をお掛けするかもしれないが、どんどん進めていただきたい。
 千田次期社長 不適正募集を受けての建て直し体制の構築が、かんぽ生命社長前半の命題だった。チェック体制作りにも取り組んできたが、それだけで組織風土改革は実現できない。私もフロント社員の顔を見ながら要望や質問に答える努力を重ねた。根幹は、郵便局経営とコミュニケーション活動の両面ある。
かんぽ生命の営業は厳しい状況が続いている。社員は処分に対する不安がある。安心して頑張れる環境づくりが再生への道だ。新年度がスタートし、良い状況に変わりつつある。しかし、全ての郵便局がそうではなく、経営に不信感を持つ社員の方もいる。対話を実行したい。
 谷垣次期社長 大事なことは、現場に行って社員の声を聞く。フロントラインだけでなく、本社の社員含めて声を聞いて、じっくり考え、注意して進めたい。

 ――職域営業に対する郵便局の支援とは。
 千田次期社長 自治体や病院等に入り、お話をさせていただく。郵便局にはさまざまな地縁のある方もいらっしゃる。ご紹介「法人コラボ」でウィンウィンを目指す。今の時代は平日不在で、土日訪問を断る方も多い。お客さまが安心して話ができる場は郵便局。土日のロビー活用も、協力のもとで検討したい。
 ――協力会社への価格転嫁問題にはどう対応されていますか。
 衣川社長 中小企業庁のアンケート調査で厳しい評価をいただいたことは重く受け止めている。その後、①自主点検②相談窓口③コミュニケーション促進月間の協議等――に取り組み、4月中に完了できるよう精いっぱい進めている。郵便局ネットワーク、郵便・物流のネットワークは協力会社の方々のご協力なしでは維持できない。今後、毎年定期的に協議させていただく協力会社様とのウィンウィンの体制整備に今、取り組んでいる。

 ――金融ユニバーサルサービスが課せられる養老保険をかんぽ生命様以外の保険会社と手を組む可能性はありますか。包括事務受託もじわじわ進んできていますが、さらなる拡大に向けては何が必要ですか(郵湧新報)。
 千田次期社長 今の時点として検討していることはない。ただ、将来どう変化していくかは分からない。
 衣川社長 自治体の方々のさまざまな考えもあると思われる。郵便局でどこまでできるかを一つ一つしっかりお伝えしていくことが大切だ。
 ――相続関連サービスをかんぽ生命様も始めるようですが、終活相談を実施される支社もあるため、グループ一体で取り組む考えは。郵便局の拠点価値向上として〝健康〟をテーマに地域に貢献される考えは(郵湧新報)。
 千田次期社長 かんぽ生命のコンサルタントの皆さんは今、相続含めた終活の社外認定試験を受けながら動いている。お客さまに喜んでいただけるスキルを身に付け、高度な相談は専門の方につなぐ。
 超高齢社会では相続や介護等、社会問題のニーズに対応し、喜んでいただけるサービスを模索しながら進めている。かんぽだけでやった方がよいのか、グループを挙げて郵便局と一体でできるのなら、素晴らしいサービスになる。
 局周のお客さまに貢献し、郵便局らしさを提供できる温かみのある新サービスを考えたい。終活と共に健康は非常に大事な分野。かんぽ生命はラジオ体操で地域の皆さまに喜ばれている。健康をテーマに郵便局、グループ全体でどういうサービスができるのかを考えていきたい。
 谷垣次期社長 せっかく千田社長が日本郵便の社長になり、連携できるのだから、できるだけ郵便局ネットワークの資源を生かし、かんぽ生命のサービスが最大限お客さまに提供できるように考えていきたい。