「生きる!地域と」 新潟県胎内市

2022.09.25

 高齢者等の孤立を防ぎ、生活を支えようと、日本郵便が2019(令和元)年から複数の自治体で試行してきた「スマートスピーカーを活用したみまもりサービス」が、新潟県胎内市で新たな広がりを見せている。信越支社(菊地元支社長)は、生活状況の確認のほか、「防災」「買い物支援」「遠隔医療」など、さまざまな可能性を市と協議。現在進行形のホットな情報を関係者に伺った。

AIスピーカー「防災」活用へ

 地元出身で、地公体担当の伊藤了仁局長(乙)は「スマートスピーカーを『防災無線』としても活用してはと市に提案したところ、非常に好感触だった。先日の大雨被害では警報が聞き取りづらい地域もあったが、このスピーカーなら文字も表示されるし、何度でも聞ける」と実現を目指す。
 昨秋、同市で3カ月間行われた実証事業では、5人の利用者がスマートスピーカーを通じて家族、市、地域包括センター、郵便局につながり、喜びと感謝の声が多く寄せられた。
 「ぽすくまが朝昼晩、話し掛けてくるので、『声を出すきっかけになった』という方もおり、認知症予防にもつながる」と語る井上洋一局長(あかね町)は、市の介護予防プロジェクトの一員。「過疎地の課題としては買い物と病院が大きい。買い物支援や乗り合いタクシー、遠隔医療などのスピーカー活用も協議している。ふるさと納税の返礼品で使えれば、市の税収も上がる。地域課題解決への糸口になるのでは」と展望する。
 
   伊藤局長        井上局長

24時間屋外AED、観光シールも

 これまでも市との連携を重ねる中、地域振興の施策が次々に生まれてきた。5月からは市内10局で、観光スポットにつながるQRコードが印刷された特性シールで市の魅力を発信。了解を得た上で郵便物にペタッと貼り、PRに努めている。

 昨年末には大長谷局(坂上泰宏局長=写真下、左端)敷地内の屋外にAEDを設置。24時間使用できるもので、大長谷地区の羽田又男区長は「郵便局は安心の存在だ」と感謝を述べた。同局と鼓岡局(南克昭局長)は証明書等の交付事務も受託している。

 プレミアム付商品券の販売業務は、支社管内でいち早く胎内市から受託。〝婚活プロジェクト〟も同市と新発田市、聖籠町で取り組んでいる。
 伊藤局長は「郵便局はこんなこともできるよと、市役所や地域の方々と話す中で一つ一つ具現化してきた。人のつながりが、リアル郵便局の強みだ」とニッコリ。井上局長は「過疎地に残っている拠点は郵便局しかない。だからこそ、自分たちが地域の課題を解決する使命がある」と意欲を示す。郵便局発の〝何とかしなければ〟との情熱が、人々の心を動かし、地域を変えようとしている。

胎内市内の郵便車両に〝地域みまもりステッカー〟を貼付