「共創の未来へ」 空き家みまもり+活用
日本郵便が全国初の「空き家調査業務」を三重県玉城町から受託し、開始したのは2023(令和5)年1月だった(写真上)。空き家は近年、事件や事故にも巻き込まれかねない悩みの種。多くの自治体が「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、空き家対策を総合的、かつ計画的に実施しているが、定期的な空き家の把握が困難な課題も抱えている。
地域に開かれた〝場づくり〟も
受託業務は玉城町が独自調査し、発見した空き家を郵便集配業務担当社員が、調査項目を基にタブレットで外観撮影やシステム入力等で確認し、町に報告する。
日本郵便は同年2月から1年間、郵便局ネットワークを活用した「空き家のみまもりサービス」試行実施を開始している。
内容的には玉城町の事例と同様に社員が定期的に現況をチェックし、所有者の方に報告。玄関の施錠等7項目の基本サービスを社員が空き家を訪問して確認。結果をメールで報告する。オプションサービスもある。
試行を経ていよいよ25年1月からは「郵便局の空き家みまもり」が実装として全国一斉に始まった。内容は試行段階とほぼ変わらない。
7月から日本郵便と三井住友海上で「郵便局の空き家みまもり」利用物件を対象に「空き家賠償責任保険」の提供も開始。一層安心感が高まっている。
6月17日に宮城県内を中心に空き家を活用したシェアハウス・ゲストハウスを運営する㈱巻組(渡邊享子社長)の協力を得て「郵便局の空き家みまもり」サービスを通じた「空き家活用のトライアル」も始まった。
サービス利用者の方が物件を手放すことなく、巻組と賃貸契約を締結。すでに7月上旬から一棟貸しゲストハウスとして運用されている(写真上)。
トライアル物件の「Poopt(ループト)松本中央」内覧会で巻組の渡邊社長は「手放すにはしのびない、たまには故郷に帰りたいとの声を多くいただく。空き家トライアルは『地域の方々に開かれた場』というコンセプトを大切にしたい。観光だけでなく、地域のセミナーや食事会等にも使っていただける『地域の愛される場』にできればありがたい」と語っていた。
日本郵政グループの社員を社会課題に取り組む企業や自治体等に派遣し、共同で新規事業創出に取り組む施策「ローカル共創イニシアティブ」の一環で22年4月~24年3月まで巻組に派遣されていた日本郵便地域共創事業部の三好達也係長は「地域のにぎわいを起こすきっかけにできれば、地域に支えられてきた日本郵便の存在価値に関わると思う」と話していた。