「共創の未来へ」買い物支援(下)局内販売
お菓子やカップラーメン、簡単な日用品を販売する岐阜県飛騨市の東茂住局(写真上、山本理人局長)。東茂住地区内には24世帯が暮らす。スーパーもコンビニもない山中に高齢の方が多く住まわれ、買い物が困難なことを心配する都竹淳也市長の思いを受けた郵便局長と東海支社(大角聡支社長)がスギ薬局に交渉し、2021(令和3)年4月に東茂住局内で店頭販売(生鮮食品を除く)が始まった。商品棚の前にテーブルやいすが置かれ、毎週木曜午後には囲碁サロン等になるコミュニティ・ハブが誕生した(写真下)。
ロス出さない肝は〝仕入れの仕方〟
23年12月から同じ飛騨地区連絡会(木下直樹統括局長/国府)のやや町に近い袖川局(田中一嘉局長=写真下㊥)でも食料品と日用品の販売が始まった。田中局長は「社員と一緒に工夫を凝らしながらやっている。売上額は少しずつ増えている」と話す。
東茂住局と袖川局は「おもてなし便」と呼ばれる買い物サービスも実施。局には市の端末が設置され、FAXでスギ薬局に申し込むとスギ薬局高山西店が梱包し、店舗付近の高山局(阿畠孝之局長)が集荷に出向いて2局に配送。配送代金を市が支援している。肝は〝仕入れの仕方〟。
消費期限で、残り一週間しかないものは売れないため、通販ビジネス等は一つの商品を大量に仕入れて後払いが通例だが、「おもてなし便」は2局がロスを出さないよう商品を一つ一つ個別にピックアップして仕入れるやり方をスギ薬局が承認していることが鍵を握っている。
局内での商品販売は21年10月に関東支社(丸山元彦支社長)の埼玉県川越市にある単マネ局の川越西局(写真上、村田俊哉局長)内にファミリーマートの無人決済機能付き省人化店舗、茨城県稲敷市にあるエリマネ局の柴崎局(黒田裕士局長)もファミマと共創し、陳列棚と冷蔵商品用ショーケースが設置された。
23年9月には千葉県鴨川市の天津局(三原知之局長)、埼玉県飯能市の飯能下畑局(小畑正隆局長)、24年8月に栃木県茂木町の茂木局(秋山豊局長)に陳列棚と冷蔵用ショーケースが設置され、販売が開始された。
取り扱いは食料、飲料、日用品など約70種。売り上げに伴う手数料は郵便局の収益となる上、局の拠点価値も高まる。先行3局での販売上位カテゴリーは飲料、菓子全般、パン類の順。「歩いて商品を購入できたのがうれしい」との声も多かったようだ。
沖縄支社(金城努支社長)は22年10月にローソンと連携し、「郵便局の空きスペースを活用した買い物サポート」の実証実験を行った。当時、ローソン沖縄の協力のもと、知念局(峰井進局長)内に陳列棚が設置され、100種類以上の食品や日用品が並べられた。支払いは専用入金箱が備えられた。知念地区はスーパーもなく、JA撤退以降の買い物は地域の大きな課題となっている。
趣は異なるが、九州支社(平山泰豊支社長)管内の熊本西原局(宮下民也主幹統括局長)では、局スペースを活用したフリーマーケットを展開。「お客さまに少しでも楽しんでいただければとの想い。局内で野菜やパンを販売する局も増えている」と宮下主幹統括局長は語っている。