UPU事務局長に目時氏を選出
コートジボワール・アビジャンで8月9日~27日に開催された万国郵便連合(UPU)の27回目の大会議で、現地時間25日に国際事務局長選挙が行われ、日本郵便の目時政彦常務執行役員(現UPU郵便業務理事会議長)が156票中102票の過半数を得て次期事務局長に選出された。
世界の郵便・物流支える役目
目時氏は公約に『より信頼できる郵便ネットワークの実現』と『デジタル化時代にふさわしい郵便サービスの質の向上』等を掲げた。任期は2022(令和4)年1月~1期4年、最大2期まで。UPU事務局長のアジア・太平洋地域出身者は初めて。次期事務局次長にはスロべニアポストのマリアン・オスヴァルド国際部長が選出された。
武田良太総務大臣は8月27日の記者会見で「電子商取引急拡大に伴い国際物流が増加する中、国際郵便のルール作りを担う国際機関としてUPUの重要性が高まっている。国際郵便分野のみならず、行政・外交の経験も豊富な目時氏が国際物流等を支えるルール作りの中心となることは日本の国益に大きく資する。3カ国候補の厳しい選挙戦だったが、総務省や外務省はじめ、関係各所の力を結集し、国も一丸となって対応した結果、当選を実現できた。UPUの活動を積極的に支援したい」と祝した。
新型コロナの世界的まん延を受けて1年延期のもとで開催に至った第27回UPU大会議は、「目時次期事務局長選出」のほか、「UPU条約の恒久化」が承認され、閉幕した。恒久化とは、4年に1度の全部改正方式から一部改正方式への転換で、連合文書の法的安定性確保に資するもの。条約改正提案に日本は長年取り組んできたが、今回、日本とUPU事務局からのプレゼンに対し、各国から賛同する発言が相次いだため、承認が得られた。また、医療危機対応や健康増進への郵便事業の役割も共有され、「UPUは世界最大のロジスティックネットワーク。今こそネットワークを動員し、郵便が不可欠と示す時だ」と発言も見られた。
昨年2月から始まった新型コロナによる危機は世界中の郵便部門に大きな打撃を与えた。今期で任期を終えるフセイン事務局長は「約18カ月の間に国際郵便は信じられないほどの変化を経験し、一部の政府は郵便を重要なインフラとして宣言した。郵便ネットワークを通じ、薬やワクチンの配送等、重要なサービスを提供した」と国際郵便の〝革新〟と〝創造性〟を強調した。
環境の変化を踏まえ、UPUは昨年「Post4Healthイニシアチブ」を開始した。独自のエコシステム(業界を超えた連携)作成を目的とする柔軟なマルチステークホルダープラットフォームで、郵便事業を通じた広範な医療サービスとして加盟国の支援を受け、グローバルネットワークを通じて医療製品提供の能力開発を奨励している。
【発言の一部を抜粋】
◎UPU 郵便の課題は勢いをつかむこと。郵便の健康に対する貢献が、顧客とビジネスパートナー双方にメリットがあると保証すること。我々はコロナを乗る超えることができる。
◎米国郵政公社(USPS) 「健康とウエルネス(より良く生きようとする生活態度)における潜在的な郵便サービスの役割」を調査。USPSの伝統的な健康ポートフォリオの注意深い再検討を提示し、ワクチンの配布、保管、病期分類を含む国の回復努力を推進する上でUSPSは潜在的な役割を果たした。「非インフォデミック」(国連が主導する世界的な戦い)で郵便事業の役割は、全ての専門家によって強調され、信頼と親しみやすさにより、郵便サービスは健康とウエルネスサービスを提供する上で強力なパートナーとして人々に受け入れられている。
◎仏ラ・ポストグループ 「フランスの郵便事業者の健康活動はワクチン提供だけでない。温度に敏感な製品の「バイオロジステック」、自宅のリモートアフターケアのアプリケーション、ヘルスケアデータのホスト、ラバンクポスタル。これら画期的な郵便ソリューションの大部分はデジタル化が鍵。人々が必要としているものは変化している。医療施設に行くよりも、できるだけ長く家にいることを好む人が増えている。
◎エジプトポスト エジプトポストは2500万以上の普通預金口座を持ち、国内で最も広範な国内送金ネットワークを提供している。2019(令和元)年に最初のモバイルアプリをリリース。現在、1600万口座に達し、顧客とローンプロバイダーをつなぐ人気のマイクロファイナンスポータルを運営している。目標は『誰も置き去りにしない』こと。
※目時次期事務局長がUPU郵便業務理事会(POC)議長に選出された12年に開催された大会議では、採択文書に〝公益性〟の理念が盛り込まれた。各国は〝地域貢献〟を主眼とする日本の郵便事業を評価。その前年に起きた東日本大震災時に携帯電話が機能しなくなった現地で、郵便がライフラインとして重要な役割を果たし、国民の生命や財産を守る必要不可欠なものと再認識された。