共創の未来へ 防災・減災と郵便局

2025.04.09

平常時◎備蓄 (写真は坂口輪島市長と懇談する全国郵便局長会)
 能登半島地震と奥能登豪雨で壮絶な苦労を重ねた石川県能登地区会。坂口高雅会長(町野)は「想定以上の〝備蓄〟が必要だった」と振り返る。総務省消防庁は2023(令和5)年6月に「郵便局の防災倉庫活用」を全自治体に発出した。参考事例は南関東支社(山田亮太郎支社長)と神奈川県相模原市が連携し、旧集配局の吉野局(東海林幸恵局長)に災害物資を備蓄した「郵便局の防災倉庫」だ。発案した神奈川県西北部地区連絡会の細谷勝利統括局長(相模原古淵)は「19年10月の台風19号時に道が分断され、目的地までたどり着けない状況を見て思いついた」と話す。(一社)防災安全協会の斎藤実理事長は「災害時はパニックになる。郵便局長の方々にはぜひ災害備蓄管理士の資格も取得いただき、被災時に指揮を執っていただけたらありがたい」と語る。

求められる防災の草の根活動

平常時◎防災リーダー
 「防災士資格を生かそう」と埼玉県西北部地区連絡会(茂木克彦統括局長/長若)は昨年9月12日に「防災研修」を開催。講師は河田惠昭関西大学特別任命教授(ニューレジリエンスフォーラム共同代表〈同フォーラムは末武晃全特会長も発起人の一人〉)に影響を受け、比企広域消防本部消防長等を歴任した東松山市危機管理防災課の小林明雄危機管理監。小林氏は「起きてからでは遅いことを肝に銘じていただきたい」と訴え、小林一浩副統括局長(東吉見)が「地域の防災リーダーとして役目を果たそう」と締めくくった。
 千田哲也社長は昨年8月1日、気象庁と日本郵便との「地域防災支援の連携協定」締結の記者会見で「どこで起きてもそこには郵便局がある。災害は命に関わる。生半可な知識やノウハウで動いては裏目に出る。郵便局ネットワークが防災・減災分野でも地域に貢献できるよう知識や対応能力を高め、日頃から〝防災相談〟にも応じられる郵便局を目指したい」と展望した。
災害時☆情報提供
 2月20日の東京支社(高橋文昭支社長)と狛江市との包括連携協定締結式で松原俊雄市長は「地震や豪雨が増え、防災も重要。被災時は搬送物が多くなるが、誰がどこに持っていけばよいかが分からなくなる。窓口で住民の方と対面し、配達もされる郵便局と、ぜひ訓練等も一緒に願いたい」と提案。
 東京都多摩東部地区連絡会の髙木淳光統括局長(多摩センター)は「日本郵便は災害時にNHKに情報提供する協定を結んでいる。情報も提供できる」と応え、口岩洋伸局長(狛江東野川)は「郵便局は車もバイクも持ち、機動的にお届けできる」と強調した。
 先立つ2月1日、中国支社(砂孝治支社長)と中国放送(宮迫良己社長)は「災害時における防災・減災ネットワークに関する協定」を締結。災害発生時に郵便局から放送局への情報提供を主に連携する。
 23年11月に開催された「沖縄・九州郵便局離島サミット」で、NHKは「災害時は自治体に電話して情報収集するが、郵便局は生活者に近い視点で見る人が共感しやすい情報をいただける」と語っていた。サミットでは、沖縄気象台の若松俊哉情報官が「温暖化により集中豪雨だけでなく、熱中症も増え、死者は年間約1000人に及ぶ」と訴えた。
 市町村長が指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)を指定する法律が施行されたことを受け、昨年8月には熊本県北部地区連絡会(荒木誠一郎統括局長/横島)管内の南関町内局、埼玉県南部地区連絡会(三田浩嗣統括局長/浦和田島)管内の川口市内局なども指定されている。
災害時☆安否確認や避難誘導
 昨年1月から約1カ月間、四国支社(内田謙介支社長)管内の高知県梼原町で総務省の「郵便局等の公的地域基盤連携推進事業」が行われた。郵便局のみまもりサービス用端末に緊急時の自動見守り機能を追加。総務省の担当者は「災害時に身近な郵便局長が画面で呼びかけた方が高齢者なども安心できる」と指摘する。
 内閣官房防災庁設置準備室の箕打正人参事官補佐は「全国津々浦々に2万局を超えてそれぞれの地域に拠点がある郵便局は非常に心強い。〝地域防災力の向上〟のために皆で助け合う想いを各地域で共有し、防災意識を高めていただく防災の草の根的な活動を願いたい」と期待を寄せる。