周南市で郵便局オンライン診療 高瀬局

2024.07.24

 日本郵便は7月16日、山口県周南市の高瀬局(福谷直美局長)で本格的なオンライン診療をスタートする。6月1日に厚生労働省が特例的にオンライン診療の受診可能な場所や条件の制度を示したことを踏まえたもので、実質的に全国初の実装となる。日本郵政の増田寬也社長は6月26日の記者会見で、「周南市が地域医療体制を確立する上で有用と予算を組み、郵便局を巻き込んで始められる。行政の方が熱心なのはニーズが高い証しだ。良い成果が見えれば全国展開への橋渡しになる」と期待を寄せた。(上の写真は南大呑局)

増田社長 全国展開への橋渡しに

 厚労省は2019(令和元)年から山口県萩市相島等で「へき地等のオンライン診療体制の構築」の実証実験を開始し、郵便局の「まちの保健室」も同時期に鳥取県で始まった。22年12月から愛媛県宇和島市で郵便局がオンライン診療をサポ―ト、23年11月から石川県七尾市の南大吞局(写真下、池岡直樹局長)で総務省の実証事業も行われ、高い評価を得ていた。

 長谷川英晴参議院議員は6月7日の参議院地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会で質問に立ち、郵便局のオンライン診療について、自見はなこ地方創生大臣から「患者の方が安心してサポートを受けられ、へき地医療を補完する方策として大変有用」との答弁を引き出した。
 長谷川議員は2022(令和4)年11月の初の国会質問で、郵便局の「まちの保健室」について質問している。
 全国郵便局長会の末武晃会長は昨年11月28日の沖縄・九州郵便局離島サミットで「郵便局のオンライン診療は自治体も注目。採算が合う仕組みができ、ネットワーク維持につながることを願ってやまない」と語っている。
 末武会長も自見大臣の元を訪れ、郵便局のオンライン診療が可能になる措置を要望している。自見大臣は7月2日の記者会見で、「デジタル田園都市国家構想総合戦略に、オンライン診療の推進拠点としての郵便局の空きスペースの活用を盛り込んでいる。『全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会』の実現へ、着実に努めてまいりたい」と意欲を示した。

高瀬局 応接室提供と通信接続をサポート
月1巡回診療で毎火曜にオンライン

 高瀬局で始まるオンライン診療は、応接室に設置されたウェブカメラ付きPCを通じて、慢性疾患など事前に医師から経過観察が必要と判断された患者の方が、毎週火曜にオンライン診療と服薬指導が受けられるもので、オンライン診療が必要かを判断する同じ医師による巡回診療は毎月第3火曜日。
 周南市は、地理的条件などで医療資源が限られた地域でも医療提供体制を構築し、地域住民の暮らしを支えようとオンライン診療を日本郵便に委託。高瀬局は応接室の提供とオンライン通信の接続をサポートしていく。

 愛媛県宇和島市のオンライン診療は、離島・戸島でスマートスピーカーを使った郵便局のみまもりを組み合わせる形で実現(戸島局、写真上)。郵便局長や社員の方が訪問みまもりの際にタブレットを持って行き、利用者宅で立ち上げて指定医師や薬剤師につなぎ、オンライン診療とオンライン服薬指導に従って、郵便局が処方箋医薬品を配達する。

 石川県七尾市の南大吞局(写真上)で行われた総務省の「郵便局等の公的地域基盤連携推進事業」のオンライン診療は、診療所と郵便局が情報連携を行い、郵便局は患者の方のスケジュールを整理し、予約日時に局長や社員が機器を立ち上げ、お声がけして局内の診療ブースに誘導して診察が行われた。金融決済も薬の配送も郵便局で完結できる。

日本郵政グループ 新コミュニケーション
「郵便局って、昔のままだと思ってない?」 

 また、日本郵政グループは7月から各社のマーケティング強化を目指し、グループ統一の新しいコミュニケーションをスタートした。約2万4000の郵便局の存在意義等を「全ては、もっと、いつでもそばにいるために」と、グループ全体の価値として日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の進化する商品やサービスを紹介。身近だからこそ伝わりにくい郵便局のイメージを刷新する。
 記者会見で放映されたキャッチコピーは「郵便局って、昔のままだと思ってない?」。増田社長は「『JPビジョン2025+』の実現を目指し、グループと郵便局への期待感を醸成するための新たなコミュニケーション。三事業を象徴する3色の鳥「チッチチ」がCMや広告、局窓口等に登場する。テレビCMは7月中旬(13日)から開始。郵便局のブランドイメージを高め、収益力向上にもつなげる」と意欲を示した。
 記者団の「郵便料金引き上げについて」との質問に対し、増田社長は「内容を周知し、受け入れていただけるよう全力を挙げている」と答えた。「収益性を高める新商品とは」には、「来年の年賀状も、より魅力を高められないか検討中。ポスト投函商品は好評。新しいことが工夫できないかも検討している」と述べた。「ヤマト運輸との共創状況を」には「順調に移行が進んでいると聞いている」と強調した。
 郵湧新報の「①山口県内の郵便局のオンライン診療について②企業や団体が地域との関係性を持とうとする時に郵便局がつなぎ役になるとは③グループの危機管理を④100円ショップと共創する考えは」には、「石川県七尾市の実証や愛媛県宇和島市でも行われたが、それぞれやり方が少しずつ異なる。良い成果が見えれば全国展開への橋渡しになる」などと期待を寄せた。
 「郵便局が企業や自治体等のハブ的な機能を果たすことで地域課題の解決につながる。地域の実情をよく知る局長や社員の皆さんも多い。ローカル共創イニシアティブで社員も派遣している。好事例をつくりたい。受託事務以外にも郵便局が地域を支える力になるケースも出ている」と報告した。
 「本社がある東京は首都直下地震の危険があるため、災害危機管理体制の強化に向け、自衛隊OBを社員として採用し、訓練を行っている。9月にも行う。支社を含めて、拠点的な郵便局も災害時に機能を果たす必要がある。システム、通信を含めて備えを強化している」と明らかにした。
 「100円ショップはまだ聞いていないが、窓口事業の収益が厳しい。担当部署で考えていけたらと思う」と語った。