インタビュー 全国郵便局長会 伊志嶺豊和理事(沖縄地方会会長)
価値ある郵便局ネットワークの将来像に向けて、さまざまな主体と懸命に〝共創〟し、地域創生に取り組む姿を全国郵便局長会(末武晃会長)の伊志嶺豊和理事(沖縄地方会会長/宮平)に伺った。
地域を守り抜く〝よろず屋〟に
――沖縄は局内スペースを活用した「無人販売」など地域貢献、地方創生の施策が活発ですね。
伊志嶺理事 地域のお役に立てることは郵便局にとって何よりの喜びだ。コロナ禍で観光客が減り、地元企業は大きな打撃を受けている。黒糖業界もお土産用の需要が落ち込み苦戦しており、少しでも力になれればと、黒糖を小パック詰めにして期間限定で那覇中央・宮平・首里の各局で販売したところ、大好評だった。
無人販売では卵も人気だ。鶏卵業者さんが規格外の卵を安く提供しており、その日のうちに完売するので、いつも新しい卵が並んでいる。中には、卵を買いに来局され、ついでに郵便や貯金などの用事を済まされるという方もいる。
無人販売は、地元企業や地域の方々とのつながりの中から、郵便局に商品を置かせてほしいとの要望があり始まったものだ。お手製の民芸品や沖縄風のマスクなども評判が良い。郵便局もそれぞれの局内スペースを活用しPOPなどの飾り付けに工夫を凝らしているため、お客さまの憩いの場にもなってきた。
――離島が多い沖縄で、郵便局はどのような存在でしょうか。
伊志嶺理事 21の島々に郵便局がある。人口数百人ほどの小さな島やコミュニティーの中では、困ったことがあれば「局長、これ分からないんだけど、どうしたらいい?」と、さまざまな相談事の受け皿となっている。振り込め詐欺を未然に防げたこともあり、局長たちの存在は大きい。郵便局には〝よろず屋〟的な役割がある。
その上で、時代に即したDX(デジタルトランスフォーメーション)の恩恵を受けられるような新サービスも加え、お客さまのさらなる利性向上を通じ、郵便局が率先して地域を守っていきたい。
今後、「離島サミット(仮称)」の開催も検討している。共通の課題解決に向け解決の糸口を探す場にしていきたい。例えば、漂着ごみ。片付けても片付けても海岸に打ち寄せられてきて、西表島のマングローブ林にも大量漂着している。他にも、サンゴの白化現象や昨今の軽石問題なども深刻だ。郵便局がどのような形で地域の力となっていけるか議論を重ね、出てきた解決策などを発信していきたい。
――全特で担当されている専門委員会を教えてください。
伊志嶺理事 「地域貢献・地方創生専門委員会」のほか、「中堅若手代表者小委員会」と「全特結成70周年対応PT」に情熱をもって取り組んでいる。
地域貢献・地方創生の取り組みとして、県内では7市町村と包括連携協定を結んでいる。各家庭が余剰の食品を寄贈する「フードドライブ」は11市町村で行っている。また、学校の保健室のような気軽に相談できる「まちの保健室」は名護市の羽地局、うるま市の与勝局で実施し好評だったが、現在は新型コロナの影響でそれぞれ休止しており、再開が待たれる。
2018(平成30)年に東海地方会(遠藤一朗会長/全特副会長)が開催した地方創生フォーラムに参加した折、愛知県一宮市の中野正康市長らが出席されていた。その際に、1955(昭和30)年に一宮市に合併した丹羽郡丹陽村が、昔、那覇市に戦争で亡くなった子どもたちの慰霊の塔(「小桜の塔」という)を寄贈したという話をしたことがきっかけで、中野市長とのご縁が深まり、昨年、両市の市制100周年を記念し中学生のオンライン交流会が実現した。遠く離れた両市の橋渡しが実現でき、全国にネットワークが広がる郵便局の存在価値を改めて実感した。
――今年は沖縄の本土復帰50年です。
伊志嶺理事 大切な節目の年だ。県営平和祈念公園には「逓魂之塔」が立つ。戦争で亡くなられた郵政関係者ら505人の御霊を祭っており、6月23日には毎年慰霊祭を行う。この塔や米軍統治下時代に発行された「琉球切手」の存在を知らない若い方も増えているが、歴史の語り部となって、平和や命の大切さを発信していくことは、沖縄の郵政関係者に課せられた使命だと思う。