窓口弾力化の行方は?

2021.10.11

 日本郵便は過疎化やデジタル社会の進展など急速な環境変化の中、郵便局ネットワーク維持を目的に地域ごとのニーズを踏まえた窓口営業時間の弾力化を検討している。7月からは離島を中心とする53局で郵便窓口を金融窓口と同様の16時に閉めたり、昼に60分窓口を休止したりするなど、営業時間短縮を試行中。現場の印象はどのようなものだろうか。

研修や局周が充実

 東京都内にも離島は多い。大島や新島、三宅島、小笠原諸島、八丈島など。そのうち、三宅島には五つの郵便局があるが、配達を全て受け持つ集配センター併設局の三宅島局(髙松秀直局長)は土日も窓口を開けている。


 髙松局長は「16時に閉めた後は、お客さまからの注文やクレーム対応、局周活動等をして、デメリットは感じていない。2名局は一人が休んだり、出張になったりすると、昼休みも取りにくかった。近くの役場はかなり以前から昼休みを取っていたため、郵便局が昼休憩を取っても、この地域のお客さまは違和感がないようだ」と話す。
 岐阜県・中切局の石丸直樹局長は「16時に閉めた後に手続き改正等、社員の研修時間が十分取れるようになった。局周も閉めた後で1軒か2軒、週に1回か2回できるようになった。話の内容は、契約内容のご確認や貯金の満期のお知らせや年金など。地域の状況の話を伺ったりしているが、お客さま宅を訪問することで、より地域の状態が分かるようになった」と語る。
 高知県・橘浦局の伊與田和彦局長は「離島ではないが漁業中心の港町。年金生活者が大多数だ。地域に他に金融機関はない。16時以降は自局の研修や整理整頓などできることが増え、局周活動にも活用している。時短は全国に広がるかもしれないが、時短後も仕事はしっかりとしているため、賃金カットに向かわなければよい。簡易局への移行や廃局にならないことを望む」と訴える。
 愛媛県・新居浜大島局の池田工局長は「16時以降にお客さまの所に訪問し、ご要望等の聞き取りや、チラシ・パンフレットを届けに行くなど局周活動の充実が図れるようになった」「窓口時短で生み出せた時間は、手続き等の制度改正や営業スキル向上の自局研修にも生かせる」と語る。
 一方で「2年ほど前、農協も漁協も島内から撤退し、残された金融機関は郵便局だけとなった。島の金融機関の使命として、お客さまサービスの重要性を感じている。また、「ファイナンシャル・プランニング(FP)技能資格等を生かして、お客さまに寄り添ったサービスを提供できるよう、これからも地域のお役に立ちたい」と意欲的だ。


 鹿児島県・住用局の山田浩久局長は「窓口を1時間早く閉めた後、事務処理やミーティング、集配の手伝いなどをしている。業務に余裕が生み出されるようになった」と満足気だ。
 時短試行中の離島や過疎地の局長の方を取材(電話取材含む)した結果、共通したのは「16時閉めに対するお客さまの影響はないと感じる」こと、「16時~17時に別の業務ができ、ありがたい」などだった。