共創の未来へ⑩ 郵便局を多機能拠点に
総務省の2025(令和7)年度実証事業の一環として島根県大田市の石見銀山大森局(小川修司局長)で「地域の暮らしを支え、豊かにするコミュニティハブ〝暮らしの郵便局〟モデル」が始まったのは10月6日。(一社)石見銀山みらいコンソーシアム、大田市、日本郵便、島根県立大学、地域企業が連携し、行政のみならず民間の補完的な役割も郵便局が果たし、コミュニティハブづくりに挑んでいる。
複合的かつ広域に各地域の維持を
石見銀山といえば世界文化遺産に登録された観光名所。土日には多くの観光客が訪れるが、その分、平日に休む土産店等も多い。郵便局は平日に開局していることから代替的な役割も務められる。
石見銀山大森局での実証は①島根県立大学等と連携した健康教室・相談窓口②地域のケーブルテレビ局等と連携したスマホ教室・相談窓口③地域企業や行政等と連携した観光拠点化(土産販売、観光案内など)④地域企業などとコワーキングスペースを設置し、交流拠点化――の4施策。
10月16日には健康教室・相談窓口(2カ月ごと)とスマホ教室・相談窓口(1カ月ごと)が開催された。小川局長は「特にスマホ教室に人気があった。LINEのやり方もご高齢の方々は興味深く聞かれていた。局前には人気の高いパン屋さんがあるが、月水金がお休み。そのお店の焼き菓子等をお土産品として販売すると、観光客の方だけでなく、地域の方にも喜ばれている」と話す。

スマホ教室も
総務省郵便局活用課の菅野諒地域貢献推進官と田中智大利便増進係長は「健康相談では外付けカメラで体の歪みを見て医師の方からアドバイス。スマホ教室は行政手続きのデジタル化が進む中、スマホが使えない高齢者の方は孤立化してしまう。地域向けと観光客向けのサービスを掛け合わせ、郵便局を多機能化し、複合拠点を創ることで持続可能な地域を実現できる」と指摘する。
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10月22日からは広島県安芸高田市と市内ほぼ全局(市と近隣の1局除く)でオンライン「行政手続きとよろず相談受付業務」が始まった。オンラインよろず相談は2021(令和3)年8月から栃木県日光市と関東支社(丸山元彦支社長)管内の清滝局(小倉浩史局長)、24年1月から熊本県御船町と九州支社(平山泰豊支社長)管内の七滝局(岡本悠太局長)と御船上野局(高松克有局長)で開始され、広域という観点では、包括事務受託を天草市内23局で24年10月にスタートしているが、安芸高田市は市内全域15局の〝広域〟で行政手続き×よろず相談を〝複合的〟に実現した全国初の実証だ。

15局が「行政事務取扱局」に
セレモニーで壇上の郵便局長15名一人一人に「安芸高田市行政事務取扱局」の看板を手渡した藤本悦志市長は、立ち会い会見で「行政をスリム化せざるを得ない中、支所の縮小は市民の皆さんには不安極まりない。人の顔を見ながら話ができる郵便局は地域の皆さんにとっての拠り所。5支所より15局の方が近い方も多い。メニューは増やしたい」などと語っていた。