=ルポ= 局長・社員の奮闘続く奥能登
輪島局の局長室に震災で全焼した「輪島朝市」にあった郵便ポストが置いてある。赤くさびたポストを見ながら「局長として着任してから一日として気が休まる日はなかった」と語る池田靖広局長。(写真下)
輪島局でも多くの社員が仮設住宅から通勤
取材をした8月12日も奥能登地域では前日から降り続いた大雨により国道が崩落。車3台が巻き込まれ3人の重軽傷者を出した。池田局長は、安全最優先の配達業務のため一部配達中止を指示した。局員の安全に心を砕く日が続く。
最大震度7を観測し、甚大な被害を受けた輪島市では、当時13局、5簡易局が営業をしていた。その後も豪雨災害などが続き、今も2局、2簡易局が営業を再開できていない。
街の復旧も遅れている。輪島市の約1万世帯のうち約3000世帯、3割の住民が引き続き仮設住宅で暮らしている。輪島局でも多くの社員が仮設住宅から通勤している。
池田局長は「町の電信柱の多くは傾いたまま。道路や倒壊家屋も修繕が追い付かず、そこかしこに災害の傷痕が残っている。五つの町で配達ができていない現況です」と訴える。
豪雨の中、仮設住宅に郵便物を届ける
8月12日も豪雨となり、横殴りの風雨が降りしきる中、全身びしょぬれになって仮設住宅にバイクを走らせる社員の姿があった。凸凹だらけの道路、段差のできた橋はまだ開通していない。しかし、配達する社員は「郵便が届いて喜んでくれる住民の笑顔に元気をもらっています」と笑みを浮かべる。
池田局長は「仮設住宅では高齢の住民の方でも定期的に郵便局に出向いて、転送届の更新処理をしなければならない。その負担を軽くしてあげられる方途を関係各所に相談している」と語る。
震災時に効果を発揮するオンライン診療
昨年2月までオンライン診療の実証実験が行われた七尾市の南大呑局(池岡直樹局長)も震災時に大きな揺れに襲われた。「幸い大きな被害はなかった」(池岡局長)が、震災や豪雨災害を通して実感したことがあるという。それは、オンライン診療の早期実施だ。
オンライン診療には、①患者の移動時間、交通費負担の軽減②局員のサポートで高齢者も安心して受診できる――などの利点がある。南大吞局などの成果を踏まえ、政府は6月、「郵便局等を活用したオンライン診療の推進」を明記した「地方創生2.0基本構想」を閣議決定している。
池岡局長は「道路などが寸断され、移動もままならない中で、迅速な診療に寄与するオンライン診療の普及が望まれる」と訴える。