「共創の未来へ」 郵便局の「無人販売」
郵便局ロビーの空きスペースを活用した「無人販売」は、全国で4800局以上に広がっている。朝採れの新鮮野菜に焼きたてのパン、手作りのアクセサリー、お菓子、お茶など多彩な商品が並び、買い物を楽しみに訪れるお客さまも多い。(写真は石垣新栄局で、川島局長㊨と、あがりえ青果の皆さん)
商品PR・農福連携など魅力拡大
沖縄県石垣新栄局(川島靖史局長)は、地元「あがりえ青果」(東江正人代表)の野菜や果物を販売。局の向かいにイオン系の大きなスーパーがあるが、安くて鮮度も良いため、あっという間に売れていく。東江代表は「郵便局は人の流れが多いので売れ行きも良く、日に何度も補充に来ている」と喜びを語る。
川島局長は「お客さまが口コミやSNSで〝今日は○○があるよ〟と拡散していただいている。沖縄の揚げ菓子サーターアンダギーなども販売してきた。無人販売は、業者の皆さんとの信頼関係があってこそ」と強調する。
沖縄・首里城に近い首里当蔵局(下地達也局長、写真上㊨)には、国内外から観光客も多く立ち寄る。「旗頭」をモチーフにした沖縄伝統のお守りや「サングァー」、シーサーの置物などを販売しており、好評。無人販売のオファーは引っ切りなしだ。
下地局長は「首里城が再建工事中(写真上)のため来局者は減っているが、来秋に完成予定なので集客に期待が持てる。お守りは就労支援施設で障がい者の方々が作成されたもの。せっかく無人販売で局に商品を置くなら、社会的な貢献にもつなげたい。来局する多くの外国人へ、どのようなサービスができるかも模索している」と話す。
障がいのある方々が育てた野菜や加工品を販売する「農福連携」の取り組みは、山梨県甲府駅前局(加々美英明局長)が先導してきた。一昨年には日本郵政・日本郵便が(一社)日本農福連携協会と包括連携協定を締結したことを受け、各地でじわじわと広がっている。
長野県上片桐局(川上智明局長)では、ノウフクJAS第一号認定事業所、㈱ウィズファームのりんごやその加工品の販売もプロデュースされている。
奈良県北和地区連絡会(松森正裕統括局長/奈良下御門)生駒部会(奥垣進司部会長/東生駒)は社会福祉法人青葉仁会やいこま福祉会と連携し、6局で約10種の商品を販売(写真上)。あおぞら直販も月1回実施されており、地域の特産品を楽しむ機会が増えている。
生駒鹿ノ台局の杉本浩之局長は「生駒部会として2021(令和3)年9月からお客さまのニーズを伺いつつ商品を選んできた。農福連携は時間がかかるものだが、時には多くのご注文につながることもある。施設とお客さまと郵便局の絆を強め、農福郵を継続し、浸透させていきたい」と意欲を燃やす。
青葉仁会の渡邊義臣副所長は「毎週の商品納入時には、局員の方々や郵便局を訪れるお客さまとご利用者が直接言葉を交わす貴重な機会となっており、彼らの自信とやりがいにつながっている。これからも本取り組みを通じて地域社会の中で障がいのある方々が活躍できる機会を広げていきたい」と感謝の意を表す。
このほか、横浜市東部地区連絡会(村野浩一統括局長/青葉台駅前)は、地元小学生や住民による「青葉台ハニービー・プロジェクト」のもとで生まれたはちみつ〝ぽすみつ(写真上)〟を市内12局で無人販売した際には、2カ月間で約1200個が売れた。
無人販売は、地元企業等の商品のPRができ、生産者の販路拡大、農福連携の推進など、郵便局の新たな魅力と可能性を秘めている。