社説
一連の点呼問題で6月25日以降、集配局や地域間輸送のために330局に置いてある日本郵便のトラック2500台が5年間使えなくなった。
5年間をチャンスに 郵便局を前へ
トラック便は佐川急便等々の外部委託、日本郵便輸送等グループ会社委託を含めて計58%が委託、日本郵便の軽四輪での代替が42%。
一人一人の意識の変化を促す取り組みや、遠隔点呼や自動点呼システムが機能するよう全郵便局に導入する準備が進められている。委託手数料増は収益にも影響し、打撃は大きいと思われる。
同日に行われた日本郵政の株主総会を境に、日本郵政と日本郵便は新体制が始まった。偶然にも、全国郵便局長会も1カ月前に新体制となり、立場は全く違い、単純に並べるべきではないが、指揮を執られる方々として課題山積の想いは一部共感できそうだ。
どん底からの出発かもしれないが、社会全体を見回すと、いや、むしろ郵便局、日本郵政グループへの期待は年々高まっている。
背景は急速な人口減少、高齢化により全国の地域で生活維持がますます難しくなってきたことによるもの。都市部でも詐欺等の犯罪が増え、誰を信じていいのか分からない一人暮らしのご高齢の方が増えている。
〝人がいる拠点〟としての郵便局の価値を、あらゆる角度から見つめ直すと、さらに地域に役立つアイデアも生まれそうだ。
日本郵政の根岸一行社長は就任後初の記者会見で、点呼問題の早期解決を前提にした上で「小型荷物は日本郵便の得意分野で、生かさないのはナンセンスだ」と強調した。
国土交通省のリリースでは、処分はユニバーサルサービスに配慮する方針が示されている。
軽四輪や二輪がどうなるかは分からないが、信頼回復に懸命に取り組みながら、小荷物や小さな拠点という郵便局の長所を生かし切れば、日本郵便ならではのサービスがさらに生きてくるに違いない。離島や過疎地での郵便局のオンライン診療や金融窓口も期待がかかっている。
5年間は過ぎてしまえば、あっという間。今こそ、もともと一つの郵便局から始まったオール郵政の原点に立ち返り、お客さまニーズに即したサービスとは何なのか、地域住民の方々と直に接することのできる局長や社員の方々の意見に耳を傾け、足元を見つめ直すべき時ではないだろうか。
継続審議になった郵政関連法見直し法案で「検討」される案件も長期を見据え、郵便局が前面に立って堂々と仕事ができる在り方を公平に、立場を超えて、審議いただきたい。
5年後の2030(令和12)年はSDGsの目標年でもある。5年間をチャンスと捉え、信頼とV時回復の道が切り拓かれることを心から願いたい。