日本郵政グループ新体制へ 支社長から社長選出

2025.04.15

 日本郵政と日本郵便は3月28日、6月の株主総会後の社長交代を発表した。日本郵政の増田寬也社長と日本郵便の千田哲也社長の退任に伴うもので、日本郵政の次期社長に根岸一行常務執行役(前日本郵便常務執行役員/東海支社長)、日本郵便の次期社長に小池信也常務執行役員(近畿支社長)が就任する予定。両社とも社長にの支社長経験者を登用するのは初めて。日本郵政社長に社内人材を起用するのは民営化以降初となる。(写真左から、根岸次期日本郵政社長、増田日本郵政社長、千田日本郵便社長、小池次期日本郵便社長)

各地域の現場を重視

 4月2日に行われた記者会見で増田社長は「郵便局の機能や役割が自治体から見ると単に金融商品を売る、荷物を扱うだけではない位置付けに変わっていく。支社長経験は2人を社長に選定する上で大きかった」と明かした。
 日本郵便の千田社長は「郵便局が〝全ての原点〟であり、〝生産拠点〟だ。どうすれば郵便局が一番活躍できるかを本社・支社がタッグを組んで実現のためにコミュニケーション改革に取り組んできた。その〝魂〟を植え付けていただきたい」と強調した。
 根岸次期日本郵政社長(54)は「支社長経験を踏まえ、郵便局に近い感覚を経営に生かす。お客さまから見ると、全ては〝郵便局〟。グループ一体経営を進め、ネットワークを最大限活用し、地域の方々や株主の皆さまに応えたい」と語った。
 小池次期日本郵便社長(56)は「日本郵便は〝人〟で持つ会社。全社員が納得感を持った上で仕事ができる仕組みを整えたい。中計最終年度が成長の転換につながるよう強い意志を持って全力で取り組む」と意欲を示した。

郵便局は〝全ての原点〟 


 増田社長
 社長就任5年半。4月、5月から次期中期経営計画策定作業が本格化する時期が交代期と判断した。根岸常務は時代の変化に鋭敏な感覚を持つ、次世代のエースで支社のトップも経験した。大幅な若返りを図る。

 根岸次期社長 重責に真摯かつ謙虚に取り組む。旧郵政省採用後、25年以上郵政事業に携わった。支社長経験を踏まえ、郵便局に近い感覚を事業経営に生かす。お客さまから見ると、全ては〝郵便局〟。グループ一体経営を進め、郵便局ネットワークを最大限活用し、地域の方々や株主の皆さまに応えたい。
 郵便局活用、保有不動産の再開発事業への参画等の速度を上げたい。社員が誇りを持って働けるグループにしたい。不祥事の是正、再発防止、組織改革が最優先課題。25年は中計の最終年度。共創プラットフォームの着実な成果につなげたい。

 千田社長 日本郵政グループを担う若いリーダー中心に次期中計策定をしてもらった方がよいと考え、私も退任する。小池常務は、郵便・物流事業に精通し、冷静沈着な判断と事業に対する情熱を持った人物。改革はおおむね継承いただけると思う。小池常務とガバナンス改革も話し合いたい。

 小池次期社長 地域に密着した仕事がしたいと四半世紀、郵政事業に携わった。支社長として現場での有益な経験を生かし、郵便・物流は荷物収益の拡大、利益の拡大を進める。窓口事業は郵便局ネットワークを最大限活用し、お客さま本位を実践したい。所有不動産の有効活用、国際物流事業もロジスティクス事業の成長、フォワーディング事業の改善に取り組む。
 非公開金融情報等、点呼不備の実態把握とお客さま本位や法令順守の意識醸成をやり切る。日本郵便は〝人〟で持つ会社。全社員が納得感を持った上で仕事ができる仕組みを整えたい。中計最終年度が成長の転換につながるよう強い意志を持って全力で取り組む。

 ――人事に至る経緯を。他の役員の方々も若返りを進めていきますか。
 増田社長 一昨年までは外部の方に打診をしてきたが、昨年からは内部から適任者を選ぶプロセスに入っていた。指名委員の方々と議論し、若い人に思い切ってバトンタッチし、周辺がサポートする形で固めるのが良いとなった。新社長2人は若いが、生え抜き。事業のさまざまな面を全部見聞きしていることを重視。支社長経験を本社の足らざる部分に生かしていただければと考えた。
 千田社長 今年に入り、増田社長と4月以降の新体制をどうするか、相談する機会を複数回持った。私も増田社長と同時期にかんぽ社長に就任し5年半。次期中計は作った人が実行していく方がよいと思った。
増田社長から「根岸常務を後任に」と聞いて「世代を若返らせるご意志」と思え、「私もご一緒させていただく」と応えた。
 後任は私より9歳若い小池常務がふさわしいと考えた。皆、なかなか反対意見等は言わないが、小池常務は言葉を選びながらも自分の意見をしっかりと言える人。任せられると思っている。
 根岸次期社長 青天のへきれき。期待に応えるべき、と覚悟を決めて進むしかない。役員は一律に年齢でなく、経験を十分積んだ方に引き続き重要な職務を担っていただきたい。バランスを取り、個別に考えていくべき話と考えている。
 小池次期社長 のけぞったと言ってもいいほど驚いた。大変な時期だが、日本郵便を成長路線にしなければいけないと腹を決めた。現場の動きを再度キャッチアップし、備えたい。諸先輩方も若い方も努力されている。適材適所でやっていただくのが妥当と思う。

共創時代に紡ぐ 人と拠点のネットワークを

 ――郵便局網維持に向けた法律改正が検討されていますが。共創プラットフォームの具体策とは。
 増田社長 2分の1まで持ち株の保有割合を下げたことで、上乗せ規制が認可から届出制に変わったが、不十分。法案の中に強く入れていただきたい。
 根岸次期社長 約2万4000局のネットワークは、コミュニティーを支える担い手が少なくなった地方の自治体から「郵便局を活用したい」とお聞きしている。自治体との連携を足掛かりに地域の実情に応じ、創意工夫できる基盤づくりに取り組みたい。

 ――郵便局ネットワークについて。

 増田社長 地方はリアルな拠点がなくなるので、郵便局の仕事の範囲を拡大する方向を自治体も期待している。都市部は多くの金融機関が存在し、公的な証明書の発行もコンビニが取り扱っている。ビルの2階や3階に入っているところも多く、賃料も高い。今後の大きな課題だ。
 拠点的な場への移転など、利便性を高めるために自治体を巻き込んでビジョンをつくることが重要。過疎を念頭に特別交付税の財政支援措置ができた。人口減少の新たな資料をベースに自治体も入れて議論するのがよいだろう。
 根岸次期社長 郵便局長は地域の状況をよく把握している。コミュニケーションを取って郵便局活用の必要性を地域に知っていただくことも重要。
 小池次期社長 郵便局長はさまざまな人脈を持つ。意見交換をして各地域で活用法を伺いながら、郵便局ネットワークの価値を今こそ高める必要がある。

 ――支社長経験者を初めて社長に登用された理由や意義を。
 増田社長 現場に非常に近いところで難しい意思決定を自分の責任でやる資質は非常に重要。支社の立場から本社の足らざるところを見ることも役立つ。郵便局の機能や役割が自治体から見ると単に金融商品を売る、荷物を扱うことではない位置付けに変わっていく。支社長に首長のところに行ってもらったりしている。支社長経験は2人を社長に選定する上で大きかった。

 ――新社長お二方には支社長経験における発見や次期中計等に盛り込みたいこと、増田社長と千田社長には「残すべき」と思われる肝を教えてください。(郵湧新報)。
 根岸次期社長 支社長として多くの郵便局を回ることができた。自治体の郵便局への要望、農協や漁協が撤退し、郵便局しか残っていない地域の金融サービスのありがたさも実感として得られた。計画に織り込んでいくことはある。
 小池次期社長 一つは、郵便局の価値や魅力向上。ユニバーサルサービスの重要性を実感できた。離島での配達を拝見したが、非常に大変だが、お客さまに喜ばれている。荷物は投資しながらやっていきたいが、重要な柱の一つ。二つ目は自治体との関係。買い物支援やオンライン診療、それ以外でも収益を得ながらできることがあると思う。
 増田社長 それぞれの価値が合わさることが、より企業価値全体の向上につながっていると経営トップに話し、現場にも意識をより徹底させてきた。銀行法と保険業法を超えてグループ一体の価値向上を図らないと生きていけない。グループ一体的な価値を、ルールを守った上で向上させることに知恵を出していただきたい。
 千田社長 郵便局が〝全ての原点〟であり、〝生産拠点〟だ。どうすれば郵便局が一番活躍できるかを本社・支社がタッグを組んで実現のためにコミュニケーション改革に取り組んできた。その〝魂〟を植え付けていただきたい。懸命にお客さまのために頑張る社員を元気づけ、会社に誇りを持つことで力が出ると信じている。社員を大事にする会社になってほしい。お2人にぜひ引き継いでいただきたい。