インタビュー 高橋文昭東京支社長(常務執行役員)
郵便発祥の地、東京は時代を経た今も発信地であり、主戦場。今年6月に東京支社長に就任した高橋文昭支社長(常務執行役員)は8月、本社の動きに呼応して郵便局窓口事業の専門部署を支社内に立ち上げた。高橋支社長は「局長や社員の方々と一緒に首都東京として郵政事業を支えなければならない誇りと気概を持って取り組んでまいりたい」と語る。〝褒める〟〝称える〟文化の浸透と、支社長自ら感謝の気持ちを直接現場に伝えながら「〝総合力〟に磨きをかけていきたい」とも強調。郵便局窓口×郵便・物流の両輪での成長を目指す。
皆が人材、お客さまのために総力を結集
――ご抱負をお願いいたします。
高橋支社長 就任後数カ月経過したが、走りながら考えることばかり。思えば、郵便創業は1871(明治4)年に東京―大阪間で最初の1便から始まった。東京は郵便発祥の地だ。
大切な地の約1500局、約4万人近い社員の方々の指揮を任されたことに、身の引き締まる思い。
各郵便局には郵便・物流、ゆうちょ、かんぽ、物販等々多くの商品を取り扱う中でも、お客さまに寄り添った丁寧な対応をしていただき、事故や不祥事案も少ないレベルで推移していることに感謝申し上げたい。
東京は、人口も市場規模も全国一。ニーズもさまざまあり、他事業者の方々にとって魅力的なマーケットだ。
常に競争に向き合わなければならない厳しい環境の中で、生き残れるのはお客さまに選んでいただける会社。市場規模に応じた責任が東京にはある。気概を持って取り組んでいきたい。
――一大市場の東京支社における事業戦略をお教えください。
高橋支社長 お客さま本位の事業活動を、支社はもとより局長や社員の皆さんの総力で進めていきたい。こうした活動を支える風土と人材の育成は、会社全体として大きな課題。
まずお客さまに寄り添う姿勢とコンプライアンスを確保することが大前提。その上で、積極的な気持ちを持つ空気の創出とともに、個別サービスの事業知識やノウハウを載せていく。
双方をかみ合わせ、「お客さまのため、事業のために頑張ろう」との気持ちを全体的に広げたい。局長や社員の方々の素晴らしい取り組みを推奨し、他局にも好事例を拡大する良いリズム感を創っていきたい。
例えば、「グッドジョブカード」は、社員が素晴らしい取り組みをしていると発見した時に、「こういう取り組みは素晴らしいと思う」と書いて社員に渡す。10枚もらった人は少し大きめの紙で褒めていく。褒め合い、喜びを伝播し、共有する。
また、お客さまから「ありがとう」と言われた声を他局にもお知らせする情報紙「東京Thanks Circle」を発行している。社員版「東京Thanks Circle」も作り、お客さま対応が素晴らしい社員の取り組み内容も紹介している。
特に素晴らしい取り組みは年間「CS AWARD」として推賞し、〝褒める〟〝称える〟文化を支社や郵便局に定着させたい。私も時間の許す限り、現場の局長の方に直接連絡し、感謝の気持ちを伝えている。
並行して、正しい事業活動に必要な知識やノウハウの能力付けを個々に任せるのではなく、組織として取り組むことが重要だ。素晴らしい能力を持つ社員の方だけに頼るのでなく、全員の力を高めたい。
――千田哲也社長は郵便局窓口事業改革も進めていらっしゃいます。
高橋支社長 「未来会議」を主体に本社が旗を振られる郵便局窓口事業改革を受ける推進母体として、東京支社は8月に郵便局窓口事業の専門部署を立ち上げた。
CPTなど適正で効果的な金融営業活動の組織的な推進を進め、研修等も開始している。一人一人が正しい知識とノウハウを持つことで〝お客さま本位〟の事業活動ができることを目指している。
営業時間の弾力化は本社の動きに遅れないように、スピード感を持って柔軟な発想で進めたい。
また、デジタル端末機器の配備も計画に基づき、DX対応も進め、セキュリティーが確保された環境で安心して業務に取り組めるように整えていきたい。
――地方創生における東京ならではの取り組みとは。
高橋支社長 東京支社への赴任前は3年強、本社で地方創生を担当した。その間、郵便局の自治体事務受託等は、全国的に大きく進んだと思う。
津々浦々の各自治体を回って、郵便局と地方創生の取り組みを説明させていただいたが、郵便局が自治体機能を補完し、互いに支え合って地域を守る仕組みを自治体の方々にもご理解いただけるようになってきた。
東京は地方創生と縁遠いと思われがちだが、実は東京には離島もあり、山間地もある。2000㍍級の雲取山があり、奥多摩を中心に、東京の左半分の多くが山間地。日本の東の端の離島と、南の端の離島は東京都だ。
小笠原諸島をはじめ多くの離島に郵便局がある。課題を抱える地域は多いため、自治体との連携も積極的に進めている。
地域協力協定と災害協力協定はすでに全自治体と締結済み。包括連携協定は昨年度までに13自治体と結び、今年度に入ってからは6団体と締結した。担当局長と地方創生担当社員の皆さんが非常に頑張ってくれ、急速に増えている。引き続き、積極的に進めたい。
役場へのアクセスが不便な方や高齢者の方は東京も増えている。例えば、マイナンバーカード関連事務は9区市62局 で受託しているが、何らかの自治体事務を受託する局は商品券も含めれば、15区市272局が自治体と受委託関係にある。自治体の方々も「郵便局がやってくれると便利」というニーズを確実にお持ちだ。
都会も、いわば一つの地方。都内でも高齢化が深刻化する地域もある。社会課題に郵便局がどう向き合えるかを考えることは、支社としても大事な仕事。
局長、社員の方々と一緒に、首都東京として郵政事業を支えなければならない誇りと気概を持って取り組んでまいりたい。
郵便局窓口×郵便・物流の両輪生かす
――ゆうパケットもゆうメールも反転攻勢されてきましたね。
高橋支社長 東京は郵便・物流分野では全国最大規模のマーケットがある。会社の将来にとって非常に大事な取り組みのため、支社としてもしっかりやっていきたい。
2024年問題、ヤマト運輸との協業、郵便料金の改定、今年はさまざまな新しい局面に立たされているが、一つ一つ着実に取り組み、今のところ、大きな事故もなく堅調に進められている。
郵便・物流の潜在力は大きい。ネットワークに基づいた強固な仕組みを作っていることに誇りを持っている。窓口から申し込まれるゆうパックは、局長の皆さんをはじめとするエリマネ局の仕事も大きな役割を担う。
局長の方もそれぞれ苦労しながら営業してくれているが、単マネ局の社員の皆さんも、ゆうパックや物販営業に取り組んでくれている。東京支社として、この〝総合力〟に磨きをかけたい。
ゆうパケットやゆうメール等の小物薄物はまだ伸びしろがあり、さらにどう伸ばすかを本気で考える必要がある。牽引役もマーケットの大きい東京の役目だ。
郵便局窓口と郵便・物流の「運ぶ」「届ける」機能は車の両輪。郵便局という拠点があるからこそ、できることがある。局長・社員の方々と力を合わせて、共創する企業等も含めて知恵を出していく。両機能を持つことに誇りを持ち、生き生きと、皆で力を出し合って進んでいきたい。
(取材日:10月8日)