社説

2024.07.10

 郵政民営化法の見直しが進められる中で、原案5項目の中に盛り込まれる3社体制――。すでに12年間も4社でさまざまなことが進められる中で「何を今さら」と複雑な思いを持つ郵政関係者の方も多いかもしれない。しかし、背景に日本郵政グループの根本的な問題がある。資本金の差を見ると明白だ。日本郵政は3兆5000億円の資本金を持つのに対し、日本郵便は4000億円。日本郵便が主体的に何かをやろうとしてもできない構造がここにあるようだ。

自信を持って進む郵便局を描くには

 例えば、子会社をつくる際も日本郵政が資金を出す。それでは日本郵便にとっては自らの子会社ではないと思わざるを得ないため、会社を成長させる道筋ができづらい。
 なぜ資本金にここまで差があるのかを探ると、郵政民営化法があった。詳しい関係者によると、17年前に5社体制で始まった当初の民営化法では、郵便局会社は将来なくして、国が支援する法体系だった。
 都市部の局はゆうちょ銀行、かんぽ生命との委託契約で商品が売れれば生き残れるが、過疎地の郵便局は収益が上がらないため、なくなってしまう。
12年前の改正法で見直し、当初10年間で売却するとなっていた金融2社株式を「目指す」と、努力目標に変えられた。
 努力目標は①ユニバーサルサービスを安定的に提供②約2万4000の郵便局ネットワーク維持。二つの条件がそろわなければ売却はできない。郵便局は金融2社の委託手数料に9割方依存していたためだ。
 現在は、持ち株会社に3社がぶら下がる形だが、4社体制では資金面からどうしても日本郵便が弱い立場になる。一番弱い会社に貯金も保険も営業面で頼る。
金融ユニバーサルサービスが課せられているのは、ゆうちょ銀行ではなく、かんぽ生命でもなく日本郵便だ。
 矛盾した今の法体系のままでは、日本郵便には永遠に日が当たらない。手数料に頼らずに自信を持って業務を遂行するには、日本郵政と日本郵便が一緒になる形しかないのではないだろうか。
 抜本改正だが、日本郵政グループの主役はやはり郵便局。そこを生かす法体系にしなければ、長期で考えるとグループ全体が朽ちていくように思える。