インタビュー アフラック 宇都出公也取締役上席常務執行役員(エグゼクティブ・メディカル・オフィサー)

2022.09.12

 50年ほど前は〝不治の病〟だったはずのがん。医療の進歩等によって今や5年生存率も7割近くに向上し、「がんと共に生きる人生」が当たり前になってきた。一方で、がんと生きる期間が長くなることで、治療のことのみならず、就労や生活全般にわたることなど、患者の悩みは多様化している。がんを取り巻く状況が変化しつつある中で、社会全体で患者を支えていく仕組みが、アフラックが提唱する「キャンサーエコシステム」だ。アフラックの宇都出公也取締役上席常務執行役員は「地域に根を張る郵便局の方々と共に、がんになっても誰もが安心で健やかに自分らしく生きる社会を創りたい」と語る。

がんになっても自分らしく生きるために

 ――がん保険の歴史を教えてください。
 宇都出上席常務 1974(昭和49)年に、日本初のがん保険が誕生した。当時はがん=死のイメージが色濃く、患者本人には告知されない時代だった。そのため当社は、被保険者の家族でも給付金・保険金の給付申請ができる仕組みを作るなど、がん保険に関するハードルを一つ一つ乗り越えてきた。
 80年代に十分な説明と合意のプロセスとして「インフォームド・コンセント」の概念が生まれた後、今では9割がご本人にがんと告知される時代になった。
 国立がん研究センターが2020(令和2)年3月に公表したデータによると、全てのがんの5年生存率は約68%と、50年前に比べて生存率は大幅に高まった。喜ばしいことである一方で、がんとの共生期間が長くなっていることも意味する。
 がんに関わる問題は、身体的問題や心理的・精神的な問題、さらには、就労や経済面を含めた社会的な問題など多岐にわたる。「がん」は単なる「病気」ではなく、当事者を取り巻く「状況の問題」と捉える必要がある。

「キャンサーエコシステム」構築へ

 ――「キャンサーエコシステム」はどのようなイメージですか。
 宇都出上席常務 病気としての「がん」に対する治療は医師や医療従事者の仕事だが、がん患者さんを取り巻く「状況」の問題は、医師や医療従事者だけでは解決できず、社会全体で対応しなければならない。
 職場や学校、患者団体やNPO、企業、さらには行政機関などのさまざまなステークホルダーが連携・協業し、その上で、がんに関する社会的課題を包括的に解決する大きな仕組みが「キャンサーエコシステム」だ。ある意味、日本郵政グループの「共創プラットフォーム」の「がんと生きる」版のイメージ。

 ――多面的な支援サービスの具体化とは。
 宇都出上席常務 がんの告知を受けられたとき、誰もが頭が真っ白になる。個々の「状況」の問題を解決すべく、来年「アフラックのよりそうがん相談サポート」を開始する。
 豊富な経験と公的な専門資格を有した相談員が、がん患者やご家族の悩みを傾聴し、状況に応じた各種サービスをご案内することで、悩み・不安の解消をサポート。治療に対する保障とがんの悩みや不安の解消をサポートするサービスを一体化させて提供していく。

 ――郵便局に望まれていることは。
 宇都出上席常務 実は私の曽祖父は旧特定郵便局長だった。地域の方々にとても親しまれ、信頼されていた。日本はがん検診率が諸外国に比べてはるかに低く、コロナ禍でさらに低下傾向にある。
 当社も自治体と連携し、がんを知ってもらうためのがんに関する展示会を開催し、小児がん支援のためのゴールドリボン運動に取り組むなど社会貢献に力を入れてきたが、全国の郵便局ネットワークで、がん検診やがん教育の啓発、相談の場の情報提供等を一緒にやっていただければありがたい。
 健康に関心が高まればアフラックやかんぽ生命の商品加入にもつながり、がんに備えていただくことで、がんになっても自分らしく生きる社会を構築できる。