インタビュー〝実は私も郵政出身〟① 茨城県石岡市 谷島洋司市長

2025.07.02

 茨城県の中央に位置し、筑波山や霞ヶ浦などの自然に囲まれる石岡市。2020(令和2)年4月から市政を司る谷島洋司市長は旧郵政省出身で元瓦会郵便局長を20年以上務めた経歴を持つ。局長時代から地域づくりに対する深い思いが一貫している谷島市長は「会社の方には局長の皆さんが自信とやりがいを持って仕事ができる環境をつくっていただきたい。内外共に〝人〟を大切にする郵便局の原点に立ち返るべき時だと思う」と強調する。

郵便局は〝人〟局長職の特性生かすべき

 ――谷島市長は旧郵政省の仕事のほか、局長を20年歴任されていますね。
 谷島市長 瓦会郵便局は1918(大正7)年に開局し約100年、地域と共に歩んできた。私自身も子どものころから郵便局を身近に感じて育ち、大学進学の際は郵政会のある立正大学を、仕事のスタートは、旧郵政省時代の日本橋部会で、堀留町郵便局や中央浜町一郵便局に勤務。
 転用試験を経て、本省簡易保険局、郵政大学校研究科を経て、本省主計課で予算編成にも携わった。働くことに魅力を感じつつも、地元に戻りたいと、関東郵政局を経て35歳で瓦会郵便局長に就任。20年にわたり局長を務めさせていただいた。
 局長として地域の方の話を伺い、時には相談に乗ることで、喜ばれ、頼られる存在となり、仕事のやりがいを強く実感した。仕事と並行して教育委員などの公職やライオンズクラブなどの地域活動にも携わるうちに、局の周辺にとどまらず町全体を良くしたいという想いが芽生え、茨城県議に立候補し、当選。さらに市長選を経て、現在に至る。地域づくりに対する思いは、局長時代から一本道を歩んでいる。

 ――市長として地域課題をどう受け止め、郵便局は何ができると思われますか。
 谷島市長 人口減少が進み、地域の担い手が不足している。農業においても後継者がいないため、地域の維持が難しくなっている。そうした中で、郵便局は山間部でも海辺の町でも存在し、地域の実状を肌で感じ取ってくれている。加えて、郵便局は全国的なネットワークで結ばれた素晴らしい組織だ。特に局長の皆さんには、地域課題を共有し、解決に向けた取り組みに参加していただけたらありがたい。

 ――地域内局長の方とは意見交換の機会はありますか。行われているとすれば、何か気づきはありますか。
 谷島市長 茨城県東部地区会(藤岡修二会長/潮来辻)の総会に参加しており、加えて石岡部会(鬼澤邦明部会長/石岡若松)との「市長と語ろう会」など、さまざまな機会を通じて意見交換している。
 近年私が感じるのは、昔と比べて局長職にさまざまな制約が増えていること。私の局長時代には、例えば区長さんや民生委員・児童委員さんが局に訪ねて来られれば、局内で地域の課題など、直接仕事以外の話が自由にできた。
 ところが今では、局舎に外部の方をお招きすることが難しくなっているようだ。個人情報保護や金融機関として制約もあるとは思うが、カウンター越しの対応だけでは社員の方々と区別がつきにくい。
 「局長が話を聞いてくれた」「相談に乗ってくれた」と住民の皆さんに思っていただけることこそが、郵便局の価値を高める。以前のように地域に自ら足を運び、地域課題を拾い上げる存在であってほしい。そのためにも、会社の方には局長の皆さんが自信とやりがいを持って仕事ができるよう、環境づくりをお願いしたい。
 本物のコミュニティ・ハブを築くには、見た目の整備だけでなく、内外ともに〝人〟を大切にするという郵便局の原点に立ち返るべき時だと、私は思う。