インタビュー JP労組 山田裕行中央副執行委員長
今年もまた春闘が間近に迫ってきた。JP労組(石川幸德中央執行委員長)の山田裕行中央副執行委員長(JP総研所長)は「6月の大会に向けて25春闘は二つの大きな見直しを主眼とする。そのためには財源を生み出す新しい仕事が必要だ」と指摘する。また、「小手先で何年か延命するだけでは郵便局、日本郵政グループの将来は成り立たない。〝拠点〟も、〝人〟も貴重なリソース。地域のお客さまに役立てる仕事をつくり、収益を確保すべきだ」と話す。
柔軟な発想で〝新しい郵便局〟の形を
――日本郵便の物流事業は一時期より反転傾向にありますが、経費もかさんでいるように見えます。人件費が増えているのでしょうか。
山田副委員長 日本郵便も人手が減る中で仕事をしており、頭数を増やした人件費増ではない。
また、正社員の賃金は世間相場と比べると上がっていない。社員が配達先の小さな会社からヘッドハンティングされる事例もあり、中高年でも辞める方が多い。
社員数が減少傾向であるにもかかわらず、経費が増加する背景には、最低賃金の全国的な上昇に伴う時給制契約社員の賃金上昇がある。
賃金が上がれば、労使折半の社会保障費も上がる。労働者負担も増えるが、会社の負担も増えるため、人件費も増えているのだろう。
――2025(令和7)年春闘は何が主眼ですか。
山田副委員長 転勤のない一般職制度の導入から、今春で丸10年。転居・転勤の有無等が一般職と地域基幹職等の賃金差の当初の条件だったが、北海道や沖縄など局間の距離が離れる一部地域はそうでも、それ以外の支社エリアでは転居を伴う異動は実質ない。この問題は数年前から春闘交渉で取り上げている。
会社もコースを統合する必要があるとの認識だ。ただ、JP労組は、社員が役職に就く前の地域基幹職2級に一般職の賃金を合わせるべきと主張しており、容易ではない。
そうした中でも、一般職と地域基幹職等の統合に向けた賃金格差の見直しと、定年延長に伴う61歳以降65歳までの賃金格差是正の2点が主眼となる。
――二つの大きな見直しの課題は。
山田副委員長 見直しには大きな財源が必要。JP労組は「収益を生み出すための新しい仕事が必要」と主張し、この点は局長会も同様の認識のはず。
繁忙局でない局の営業時間を、例えば数時間から半日短くして、生み出した時間を新しい仕事に充てて収益を生み出す。
例えば人手が足りない配達の仕事を含めて、郵便局と郵便の両方に携われるハイブリッドな働き方など、新たな仕事の可能性を模索すべきだと、JP労組の「将来ビジョン」に掲げている。
小手先で何年か延命するだけでは郵便局、日本郵政グループの将来は成り立たない。抜本的に変えるしかない。郵便局の数を減らしていいとは思っていない。それも局長会と同じ認識だ。
有人拠点は、金融サービスはもちろん、その他にも役に立てる良さがこの先もある。
モノをお届けする、販売するといった機能や新たな可能性も、そこに拠点があるのとないのとでは大きく異なる。
〝拠点〟も、〝人〟も貴重なリソース。地域のお客さまに役立てる仕事をつくりだすことで、収益を確保すべきだ。