インタビュー 全国郵便局長会 土田茂樹副会長
全国郵便局長会(末武晃会長)の土田茂樹副会長(近畿地方会会長/浜大津)が指揮を執る近畿地方会は、12地方会の中で最も多い37地区会から成る。2025大阪・関西万博も控え、都心部から山間地まで地域性はさまざまだ。土田副会長は「一人ひとりの会員が全特の思いを共有するためには伝達方法等に工夫を凝らすことが大切だ」と強調。一方、将来に向けて「郵政事業を守るためには、地域を守る郵便局ネットワークを日本郵政グループ一体で支える経営が必須。グループ中期経営計画には一体経営確保が記されているが、保証はない。法律を変えなければ担保できない」と話す。
思い共有できる伝達体制の構築を
――全特専門委員会のご担当をお教えください。全特の動きを近特専門委員会にどのように反映されていますか。
土田副会長 全特の専門委員会の中で私は「人事制度・人材育成」「事業改革・営業推進」「集配センターマネジメント統合」の三つを担当している。
全特は238地区会、部会数は1622部会ある。会員の声をいかに全特の活動に反映させられるかが重要で、特に納得感を持って取り組むには、単に「伝える」のではなく、「伝わる」ための伝える側の意識改革が必要。最終的に一人ひとりの会員が全特の思いを共有するには伝達方法等に工夫を凝らすことが大切だ。
四国を訪問した際、四国地方会の専門委員会は、リーダー局長とサブリーダー局長を決め、彼らが主体となって日程や協議内容について担当理事や専務理事と相談し、運営する理想的な形を作られていた。
近畿地方会も今年度から専門委員会の活性化を図ろうと、運営等を見直した。地区会数が比較的少ない滋賀・奈良・和歌山は各県から代表1名、京都は代表2名、大阪や兵庫など地区会が多い県である大阪は南と北、兵庫は東と西にブロックを分けてそれぞれ代表を出し、全特の協議内容を各地区会に伝え、地区会の意見と要望等を反映できるよう府県・ブロック制を開始した。
――37と最も多い地区数の指揮を執られている経験も踏まえ、組織強化を図る留意点をどうお考えですか。
土田副会長 〝組織強化〟は「基本問題専門委員会」が担当しているが、全ての委員会に直結する。「風通しの良い組織づくり」は末武会長が就任以来、一丁目一番地として取り組まれてきた。全特役員は2022(令和4)年から5カ年計画で全国238地区会を訪問し、意見交換会を実施している。
加えて、今年8月に末武会長は「中堅・若手会員との意見交換会も必要」と打ち出され、会長と副会長が中若局長の現地を訪問しての意見交換会も都道府県単位で開始した。私も地区会では9月に岡山県備中東と熊本県天草、愛知県名古屋市北部、中若では高知と香川、東京23区、神奈川県に伺い、意見交換を行った。
直接会って話を聞くと全特の考えが伝わっていないことや、逆に全特が若い会員の意見を感じ取れていないことに気付かされた。労苦も伴うが、末武会長が「直接対話することが重要」と言われる意味が理解できた。
会員が結束した強い組織を創るには、全特と会員の意見にかい離があっては厳しい。意思疎通が大事だ。全特は「全特の未来を考えるミーティング」を横浜市と滋賀県大津市、東京・新橋で開催したほか、前年度に全会員に対してアンケートを実施している。
崩れなきグループ一体の郵便局に
――改正郵政民営化法の見直しの動きがありますが、現場が直面する課題にどの部分で法制度を変えてほしいとお考えですか。
土田副会長 分社化の弊害は改正郵政民営化法成立以降も払拭できていない。各社の社員間の意識は一体的とは言い難い。お客さまにとっての郵便局は一つ。郵政事業を守るには「地域を守る郵便局ネットワークを日本郵政グループ一体で支える」との思いを共有した経営が必須だ。
全特の方針は、8月24日に郵政民営化委員会に提出した意見書に全て記されているが、肝は「郵政事業の一体経営の確保」だ。
郵便局ネットワークの維持を図る意味合いから、日本郵政と日本郵便を統合した3社体制と、日本郵政または日本郵便あるいは統合会社による金融2社株式の一定数の保有。中期経営計画「JPビジョン2025」にも将来的に一体経営確保が記されているが、保証はない。法律を変えなければ担保できない。
――部会長研修では、三事業の窓口営業も重要と呼び掛けられていました。
土田副会長 郵便局ネットワークの価値はユニバーサルサービス。どのような地域でも喜ばれるサービスを提供するために、窓口営業は地域に相応した商品開発が喫緊の課題だ。三事業が危ういようでは、地域貢献もままならない。厳しい状況にある今、近畿の底力を発揮しようと「窓口営業を頑張ろう」と呼び掛けている。
地方はお客さまとの距離が近く、満期の再契約率が高いが、都市部では満期で数字を上げるのは難しく、新規契約を取らなければならない。会社に〝魅力ある商品〟づくりをお願いしたい。
――新ビジネスの芽に対する期待を。
土田副会長 少子高齢化や過疎化が急速に進行する中、郵便局は郵政事業のみならず、見守りやヘルスケアなどの〝安心〟や防災等の〝安全〟、コミュニティー活動など〝交流〟の拠点として生活相談窓口の役割が期待されている。日本の国土の約7割は山間部。JAや森林組合と提携した農業支援や森林保全の組織づくりにも取り組める。
地方に居住する郵便局OBを構成員とし、都市部の郵便局を通じて商品を販売できればよいと思う。近畿地方会にもアイデアはたくさん挙がってきている。それぞれの地域の郵便局の価値と特性を生かせる、ほしいも事業に続く新ビジネスを模索中。実を結ぶのは、これからだ。