インタビュー 丸山徹雄全国郵便局長会副会長 (信越郵便局長会会長・長野県中信地区郵便局長会会長/松本城西)
全国郵便局長会(勝又一明会長)の丸山徹雄副会長(信越地方郵便局長会会長/松本城西)は「郵便局の将来を考えた場合、地方創生は当然必要と考えるが、地域貢献、地域との連携の延長線上に地方創生があると思っている。地区やブロックという小規模な単位で地域と郵便局のつながりをつくっていく必要がある。一足飛びにビジネスにつなげようとしてもたどり着けない」と強調する。「郵政民営化法等の一部改正法案は、郵政事業の将来に向けた大切なポイントだ。早期に成立していただかなければならない。さらに成立したその先のことも真剣に考えなければならないと思っている」とも語る。
地方創生の一歩は地域との連携から
――地方創生に向けて郵便局と地方公共団体や企業等との連携で、今後さらに力を入れるべき点は何だと思われますか。
丸山副会長 いんどう周作先生の国政入りを信越地方郵便局長会の会員も皆で喜びをかみしめ、今後のご活躍を心より期待している。信越地方郵便局長会は比較的小規模だが、自然に囲まれ、冬場にはメートル単位で雪が積もり、協力し合わなければ道路も通行できない地域も多いため、まとまって団結できる土壌が特性だ。
私の地元である長野県松本市の下原で採れるおいしい「しもっぱらスイカ」は、もともと郵便局との関係がな薄かった。しかし、生産者の高齢化が進み、販路が閉ざされていく中、地元局長らの日頃のつながりから、昨年の店頭での販売はイオンのみであり、通販は郵便局のカタログ物販という形で実現することができた。
引き受けも発送も全て郵便局。非常にありがたい。努力の積み重ねでしか得られない信頼関係は目には見えないが、必ず成果に結び付いていく。
私は郵便局の将来を考えた場合、地方創生は当然必要と考えるが、地域貢献、地域との連携の延長線上に地方創生がある。地区やブロックという小規模な単位で地域と郵便局のつながりをつくっていく必要がある。重要なことは実際に地域の方々と常日頃から話ができているかだ。特に地方公共団体との関係がキーポイントになる。
都市部は都市部で町内会等の小規模な単位で郵便局との関わりをつくっていかなければ、一足飛びにビジネスにつなげようとしても、なかなか実現にたどり着けない。郵便局長も世代が変わっている。そうした課題をどう解決していくべきか考えなければならない。
――中堅・若手局長の育成に対する展望を。
丸山副会長 今の若手局長の多くは会社の仕事に懸命に取り組んでくれているが、なかなか外には出ていけない。忙しいことや、さまざまなしがらみもあるが、田舎に行けば行くほど、人と人とのつながりが大切。まずは顔を知ってもらい、人物を信用してもらえるか。都市部でも同じだと思う。地域の皆さまから親しみを込めて〝局長さん〟と呼ばれるようにならなければ、何事も前に進められない。
郵便局長は、人柄や努力で物事が動いていく個人商店の店主と、ある意味似ていると思う。生まれ育った町や村に勤務する局長も少なくなり、他の地域から通勤する局長が増えてきたが、そうだからといって地域で何もできないわけでは決してない。村や町への関わりや付き合いのつながりを切らしてはいけない。最初はささやかであっても膨らめば、お役に立てる時は必ず来る。
改正法案成立は郵政の大切な通過点
――郵政関連法の改正については。
丸山副会長 郵政事業の将来に向けて大切なポイントだ。早期に成立していただかなければならない。しかし、さらに成立したその先のことも真剣に考えなければならないと思っている。過去の改正の経緯もあり、継ぎはぎ的な部分もある。これを今後、どう整理していくのか、郵便局をどうするのかは今後の少子高齢化社会を考えると、国民的議論に付すべきもの。
郵便局にどのような機能を持たせて何をやっていくのか。地域経済を支援する郵便局をつくるのであれば、どのように貯金と保険を一体的に取り組みながら郵便の配達網も生かして、地域に役立つためにどのように利活用していくのかの議論が核心だと思う。
――次期中期経営計画で会社に期待されることはありますか。
丸山副会長 DXを取り入れ、郵便局業務をシンプル、簡素にできるようにして、局長、社員が、もっと郵便局外で仕事ができるように変えていただきたい。お客さまが望まれる郵便局の形づくりを会社には非常に期待しているし、私たち局長もつくっていかなければいけないと思う。より良い形をつくった上で郵便局らしく攻めていける。難しいルールばかりでは、守られなかったり、取り組む意欲が失われてしまう。
――物販事業の一環で宅配サービスも計画されているようですが、郵便局がどんどん入り込んでいけるとすると、どのような形が想像できますか。
丸山副会長 食事の宅配サービスはおそらく配達の方を使うことだと想像するが、ニーズがあるので、ぜひやっていただきたい。例えば、長野県の松本駅前は一等地で再開発が計画される中、宅配サービスの拠点がつくれればよいと思うし、配達の拠点は、既存のエリマネ局も活用できると思う。
再開発と絡ませる場合は、大きな郵便局跡地等を有効活用して、1階は郵便局とコンビニのセット、2階に託児所、3階から上はマンションやホテルにするなど、地元の方々の声を聞いていけば、いくらでも夢が広がると思う。
物販もカタログからネットショップへの移行は時代の流れだが、郵便局のお客さまの中には紙のカタログを好まれる方もまだまだ多くいらっしゃる。地元の生産業者の方々と連携し、埋もれた素材をどう表舞台に出していけるかも勝負だ。ネット社会となり情報があふれているが、郵便局が後押しすることで火がつくこともあると思う。こうした関わり方もこれから重要になっていくと思う。
――半日営業で郵便局ネットワーク維持のためにできることはありますか。
丸山副会長 半日営業は全ての郵便局が導入するというよりは、地域性も踏まえて導入の可否を考えるべきであると思う。半日休んで局外で営業ができるような地域は導入できると思う。
例えば、窓口を半日休止して、半日を配達に充てる場合も、配達しながら地域にお住まいの方々と触れ合った方がプラスになる地域があると思うが、全ての地域で無理に導入する必要はない。それぞれの郵便局の置かれている環境を踏まえ、地域とどうつながり、守っていけるかはさまざまな形や、やり方が必ずあるはずだ。