日本郵政 根岸一行社長インタビュー 次期中計、収益の鍵は不動産と集配拠点再編
日本郵政グループの社長とはどれほど大変な任務だろうか。変化の激しい時代にユニバーサルサービスを担うがゆえの通常の企業には見られない押し寄せる圧力の中で日本郵政の根岸一行社長は11月27日、共同インタビューに応じてくださった。各社の質問は発表されたばかりの次期中期経営計画骨子に集中したが、根岸社長のまなざしからは中計3年間のみならず、5年、10年を見通した上で最善の形を模索する様子が伺えた。
持ち株会社史上初のプロパー社長ならではの現場への理解の深さと重責感が絡み合う中で、根岸社長は「地域に根差した人脈を築く郵便局長の皆さんの存在価値は大きい」とも期待も寄せた。
地域需要に面的に応える郵便局を
――次期中期経営計画の進捗状況と特に注力する分野をお教えください。
根岸社長 次期中計骨子はグループ間で整理した。今後は具体的な数字を積み上げていく。特に日本郵便は、3月末に総務省から事業計画の認可をいただく必要があるため、具体的な足元の数字について早めに整理したい。郵便・物流事業は損益改善が一丁目一番地。物数が減る中でコストの議論も必須だ。また、集配3000拠点の再編は中長期的に考えていく必要があると考えている。この二つを組み合わせて数字を示す必要がある。
金融事業については、ゆうちょ銀行やかんぽ生命がそれぞれ独自に検討を進めている。一方、グループとしては、ガバナンスやコンプライアンス体制をしっかり整えることができなければ社会に受け入れられない。これまでの不祥事を反省し、従来十分でなかったシステム対応や研修内容の見直しなど、課題への対応を進める。収益を伸ばす観点で不動産事業は伸びしろが大きい。収益化は長期的な視野も必要で、5年、10年先に利益が積み上げられるように何をすべきかを見据えた議論が必要だ。都心部で開発余力がある地域は不動産開発のために郵便・物流拠点をどう再構築できるかを議論しなければならない。不動産と集配の二つは注力して議論を進める必要がある。
――次期中計の3年間はリモート等で業務の短縮化や開局時間の柔軟性などを広げるお考えですか。
根岸社長 局の窓口時間を短縮し、近隣繁忙局を手伝うことを前提として考えているが、可能なのであれば地域内で必要な別の仕事に有効活用できればいい。お客さまの相談等はどの局でも最低限対応できるが、スキルは必ずしも一定ではない。特に専門的な金融商品については説明ができる社員にリモートでつなげるといったやり方もある。
均一的に全ての郵便局が同じことをする時代ではなくなったことを踏まえてさまざまな選択肢を提供できる体制を整えていきたい。オンライン診療や買物支援などは複数の局に広げられるような需要があるため、次期中計骨子にも書かせていただいている。
――次期中計骨子に盛り込まれた「郵便局の機能型ネットワークと最適配置のイメージ」とは移転の意味ですか。拠点そのものを変えていくのですか。
根岸社長 現在の拠点を変える話では全くなく、現行の拠点を基本としながら地方自治体との関係強化や各地域でお役に立てるサービスを増やしたい。最適配置については、従来、都市部の局などでは建て替えのタイミングで、アクセスの悪い場所にあった局を有益性が高い位置に移転したり、近距離に小さい局が二つあった場合に大きい一つの局にしたりしてきた。この局配置の方針を変えるものではない。ただ、郵便自体の物量が減っているため、ニーズがある局では業務受託などをすることで、少しでも補いたい。
――今後の郵便局は公的なサービスをどんどん受託するのですか。
根岸社長 東海支社長時代に各地公体の首長の方々とお話しする中、出張所や支所の統廃合検討時に、郵便局に業務を代替してもらいたいとのご要望もよく伺った。受託については事例が積み上がってきたのでさらに広げていきたい。
――「郵政民営化法等の一部を改正する法律案」の附則で継続審議するとなった3社体制、金融2社の上乗せ規制撤廃について、課題や期待などをお聞かせください。
根岸社長 法案については政党間で2~3年かけて議論されている話で、我々は決まった法律に粛々と対応することに尽きる。一方、新たな事業を経営する側としては、上乗せ規制撤廃はぜひお願いをしたい。かんぽ生命だけでなくゆうちょ銀行も同様だが、保険も子会社を持って新サービスも作れるなど自由度が増すことに期待している。子会社化が認められるとより機動的に幅広、前向きに新サービスを検討できる。既に日本郵政の金融2社株式保有比率は5割を切り、届出制になっている。現状、何ができるかを検討しつつ、法案の行方を注視していきたい。
――仮に上乗せ規制撤廃となった場合、かんぽ生命が第三分野商品を始める可能性はあるのですか。
根岸社長 第三分野の新商品もあり得ることは否定しないがお客さまや競合他社との関係など、タイミングもある。候補であることを否定はしないが現段階では未知数だ。
――三事業一体感回復の手だてとは。
根岸社長 金利がほぼない時期があり、お客さまにとっても貯金の魅力が薄れ、窓口での取り組みが薄くなり、郵便局とゆうちょ銀行が連携する仕事が少なくなっていた。今、金利が付く世の中になってきたため、お客さまにどのような提案ができるかを一緒に議論しながら、総合職の研修もグループ一体で導入しており、この動きを加速させていきたい。グループ4社の社長で直接議論し、いろいろな施策を一緒にやろうとの機運も高めている。掛け声だけでなく、一体感を現実のものにしたい。
――地公体の業務受託のビジネス化の動きもある中、郵便局長の方々の地域ニーズ掘り起こしに対する期待を。
根岸社長 地域に根差した人脈を築いている局長の皆さんの存在は非常に大きい。初対面で支社の社員が説明に上がるより、地元の局長が説明してくれるのとでは臨場感も違う。ただ、必ずしも全ての局長がそうではないようにも感じる。もっと地域に溶け込んでいただけるとありがたい。今、日本郵政と日本郵便は相互に兼務する形で地方創生に向けた新規事業の組織を作り、旗を振って地域の活動を本社で把握できるようにしている。今後こういったアプローチをしていこうという方針は本社がしっかりと出していく必要があるので、一体感強化の意味では、日本郵政と日本郵便が一緒に創り上げる形を推進していきたい。