続・続 郵便局ネットワークの将来像㊹ 春日部発 郵便局×温泉バス
郵便局前からバスに乗れば、日帰り温泉に〝お得〟に行ける全国初の取り組みが、埼玉県春日部市内14局で5月29日から始まった。かすかべ湯元温泉(金子利雄社長)と郵便局の〝地域愛〟が合致した取り組みだが、実は発案は同期の2人の郵便局長によるもの。一体、どのような背景があって、住んでみたくなるようなユニークなサービスが生まれたのだろうか。(写真はシャトルバスと春日部浜川戸局の斉藤局長)
発案は郵便局長 高齢社会の地域内で共創
埼玉県東部地区会(竹澤朝之会長/関東地方会副会長/春日部小渕)の春日部浜川戸局の斉藤宰慶局長は「もともと同期の大宮浅間局の新井敏史局長は顔が広く、かすかべ湯元温泉の役員の方と長年、人間関係を築いてきた。その新井局長が広告ビジネスを湯元温泉にご案内する際に私も一緒に行かせていただいて、新井局長と『温泉を巡回するシャトルバスに住民の方々を乗せて市内の郵便局を回ったらどうですか?』と提案したところ、金子社長も話に入ってくださり、『面白いね。やってみよう』となった」と話す。
埼玉県中部地区会(林将史会長/上尾平方)の新井局長は「もともと懇意にしていただいていたお客さまが、かすかべ湯元温泉に転職して役員になられた。何かお役に立てないかと思い、課題や悩みを同期で現地の斉藤局長と一緒に伺う中で、温泉にお客さまをお連れする巡回バスを郵便局から運行できないかと提案させていただいた」と語る。
かすかべ湯元温泉はこれまでも温泉を行き来するためのバスを運行していたが、14局の局周を回ってはいなかった。今回の取り組みに当たり、なんと12人乗りのバス1台を郵便局専用に提供。
5月29日に温泉駐車場で行われた出発式では金子社長が「買い物や病院等に出向かれるのに大変なご高齢の方も増えた。郵便局×温泉バスを気軽に使っていただける地域の足にしたい」と想いを語り、渡辺秀行部会長(春日部一ノ割)も「郵便局が温泉巡回バスの停留所になるのは全国で初めてかもしれない。地域の発展に貢献したい」と期待を込めた。
運行をスタートしたシャトルバスは毎週月曜(7局)と毎週木曜(7局)の週2回、14局を巡回しながら温泉までの行きに各局前から乗客を乗せ、帰りは各局前まで送っていく。住民は最寄りの郵便局から気軽に乗れる。前日午後3時までに予約し、温泉バスに乗っていけば温泉料金1650円が1200円に、1000円以上の館内飲食が200円引きとお得感満載だ。バス料金は往復ともに無料となる。
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新井局長は「実現に至るまでには湯元温泉の方々の深いご理解と斉藤局長の地域での奔走とともに、関東地方会の竹澤副会長をはじめ、市内の局長の方々の深いご理解や尽力がないと難しかった。人口減少が進む中、郵便局が地域のインフラとして必要不可欠なものになるように、今後は市役所とつなげたり、移動スーパーの誘致を調整している。あらゆるインフラと接続できる巡回バスを目指したい」と意欲を示す。
地図を見ながら14局の巡回ルートを考案した斉藤局長は「高齢化が進み、足が悪い方や免許を返納した方、また仲間同士で温泉に入っても帰りに運転せずに済むため、皆でビールも飲める。郵便局もバスの待ち時間はコミュニティ・ハブとして世間話に花を咲かせたり、お中元等のカタログを見てもらうなど局長や社員もお声がけできる。湯元温泉さまも『損得勘定だけでなく、市民の方に喜んでもらえ、うちも郵便局も栄えるなら、ぜひやりましょう』と言ってくださる。全国の温泉などと郵便局にぜひ横展開いただき、郵便局が地域の憩いの発信地になれると良いと思う」と展望する。