社説 壮大なロマン、地球に還元
2022(令和4)年度予算案概算要求の重点施策の中で「グリーン」が筆頭に掲げられた。予算案だけではない。政府は今年度から新たな経済指標として「グリーンGDP」の検討を開始している。
通常のGDPは森林開発によって、木材やパルプ生産等の住宅建設がGDPを押し上げれば、土壌流出や環境破壊が後に起きたとしても関係なく、表面的な生産性のみで豊かさの価値を測っていた。
環境問題が浮き彫りになった30年ほど前から、新たな経済指標が必要との声が激しくなり、国連統計局も90年代後半に検討を始めたことがあったが、結局、頓挫。「何、きれい事を言っているのか」が当時の世界の風潮だった。
しかし、流れは徐々に変わり、昨年、菅義偉首相がとどめをさすように「2050年カーボンニュートラル」を打ち出した。
内閣府は「菅内閣で脱炭素が大きな政策の柱になり、対応する形でグリーンGDPの評価指標の検討が有識者から提案された。最近の国際基準や国際機関による研究などを踏まえ、環境要因を考慮した統計指標を作ろうと委託調査の検討会を設けた。複数年度でじっくり検討する。SDGsの流れとも符合する」と話す。
日本郵政グループは22年年賀はがき全てを環境に優しいFSC®認証を受けた紙にする。着工中の「蔵前一丁目開発事業」では、ライオン㈱と共同で「CASBEE(建築物の環境性能格付け手法)-ウエルネスオフィス」評価認証の最高位「Sランク」を取得。
日本郵便は2輪と4輪を徐々に電動に切り替え、ゆうちょ銀行とかんぽ生命がグリーン投資に力を入れるなど、さまざまに脱炭素を先導している。
平安時代、「多羅葉(たらよう)」の裏に枝などで言葉を記し、相手に伝えたことが始まりといわれるはがきだが、年賀はがきにとどまらず、森林がもとになる紙のはがきを順次、環境に優しい紙に差し替えることは、壮大なロマンを地球に還元していけそうだ。