人生100年時代の〝スマートスピーカー〟

2022.12.18

 日本郵政グループの〝ぬくもり〟がさらに進化した。日本郵便は12月1日、愛媛県宇和島市と連携し、「スマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービス」と「タブレット端末を活用した遠隔医療支援」の合わせ技で高齢化率40.3%の地域住民を守る受託業務を開始。郵便局の全国初となる遠隔医療支援で、内閣府の「デジタル田園都市国家構想推進交付金」に採択された。日本郵便は同日、東京都三鷹市とも連携し、都内では初の「スマートスピーカー実証事業(総務省)」を防災主眼にスタートした(写真は日本郵便の小川晃弘担当部長㊧とアマゾンの澤田大輔本部長)。

全国初 遠隔医療×郵便局みまもり 宇和島市

防災主眼にスマートスピーカー実証 三鷹市

 スマートスピーカー(アマゾンエコー)のアレクサによる音声で人と人を〝つなぐ〟優れた対話みまもり機能は自治体や高齢層から高く評価されている。日本郵便は今後、高齢者向け住宅や不動産管理会社など法人サービスを提供し、高齢者みまもりのほか、介護予防や健康増進など人生100年時代の多様な社会ニーズに応えていく。
 

高齢者に優しい地域づくりを

 愛媛県宇和島市と四国支社(安達章支社長)は昨年8月に包括連携協定を締結。愛媛県南予地区連絡会の清家裕二統括局長(宇和海)らは連携を機に「スマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービス」を市に提案していたが、市もベストな形を模索中だった。

 そうした中、市内の離島の戸島において医療体制を補強するためにオンライン診療の必要性が生じたことから、遠隔医療と郵便局のみまもりを組み合わせる形で高齢者を守るまちづくりをしようと決着し、実現に至った。

リアル×デジタルで郵便局が下支え

 オンライン診療とオンライン服薬指導等の遠隔医療支援に使うタブレットは、市が独自に構築していた「みさいやネット」(市内の病院・診療所、介護事業所、訪問看護ステーション、居宅介護事業所、薬局等々のセキュリティーを担保した情報共有システム)を活用。約20台のスマートスピーカー(アマゾンエコー)は医師の推薦と本人の希望が合致した市内の高齢者宅や戸島診療所に設置される。
 スマートスピーカーが自宅に置かれた高齢者の方々は、日頃は画面上のぽすくまから「お薬飲みましたか?」などと話し掛けられ、「演歌を聞きたい」「ニュースが見たい」などと言えば、ぽすくまが応じてくれる。音声と動画で、離れて暮らす家族とも直接会っている感覚で会話できるコミュニケーションが〝元気の源〟になる。
 一方、市や医療関係者は利用者の食事や血圧、体重などの生活状況をウェブサービス管理画面から一覧で確認でき、優先順位を考慮した対応ができる。郵便局の局長や社員は、訪問みまもりの際、タブレットを持って行き、利用者宅で立ち上げて画面上の指定医師や薬剤師につなぐ。オンライン診療とオンライン服薬指導に従って、郵便局が処方箋医薬品を配達する。

 一方、東京都三鷹市の実証事業は、災害時に円滑に住民の方々に情報を伝達するために、スマートスピーカーで行政防災無線の情報伝達手段を補完。
 全国瞬時警報システム(Jアラート)等から配信された防災情報等を、スマートスピーカーを通じて音声や文字で伝えるほか、平時の高齢者みまもりの実用性なども検証する総務省の郵便局活性化推進実証事業を12月28日まで実施する。
 スマートスピーカーは過去2年間に国内外で150%の成長を遂げ、デバイスとなるアレクサは過去3年間で2倍以上利用者が増加した。日本郵便は19年に総務省の実証事業として岩手県遠野市から始め、今年1月からは長野県大鹿村で初の実装事業を開始。現在、全国12自治体が次年度継続を検討中となっている。
 日本郵便は2015(平成27)年にIBM、アップルと連携し、タブレットを使ったみまもりサービスを高齢者約1000人に試行したが、高齢者の方はタップしてアプリにたどり着くまで目と指のタイミングがずれることや、指が乾いてタブレットの反応が鈍くなる課題も見えた。
 アマゾンのスマートスピーカーを使ったみまもりはハンズフリーで高齢者に優しかった。電気器具などの消し忘れを防ぎ、セキュリティーカメラと連動し、遠方の家族も自然体で見守れる。
 11月30日にアマゾンジャパン本社で行われた記者説明会で、アマゾンアレクサインターナショナル事業開発本部の澤田大輔本部長は「音声は最も人に優しいインターフェース。
 離れて食卓についても、アレクサを使ってあたかも一緒に食事を取っているかのような感覚を味わえるほか、相手が反応せずともカメラとマイクオンで実家に接続し、高齢のご両親などが元気かも確認できる。
 アンケートでは80%ほどの方がスマートスピーカーをお子さまや高齢者の方々のみまもりに使いたいと要望された」と強調した。

 日本郵便地方創生推進部の小川晃弘担当部長は「スーパーや診療所、地域包括支援センター、交通会社等々、地域を支えるたくさんの方々に日本郵便のみまもりシステムをプラットフォームに使っていただき、地域社会全体を支えたい。自治体の皆さまには高齢者の孤立化防止、防災情報伝達、介護予防動画などさまざま活用いただいている。1人何十人も受け持つ地域ボランティアの方も管理画面で優先順位を見ながらみまもり体制をサポートできる」などと語った。