続・続 郵便局ネットワークの将来像⑬

2022.06.02

 大きなものから小さなものまで、所々に芽生えようとする共創プラットフォームの形。長期的な視野も重要になる中で、地域ニーズに見合ったベストな在り方が模索されている。

局窓口や駐車場は共創の〝要〟

 東京都檜原村は人口約2000人のうち、約200人が二つの老人ホームに入居している。高齢化率50%を超える村として、以前は別の業者の方に見守りを依頼していたが、2016(平成28)年に「郵便局のみまもりサービス」の開始と同時に村が法人契約し、村民負担なしで高齢者を見守る。「スマートスピーカーを活用したみまもりサービス」との併用が喜ばれそうな地域だ。
 金融機関は郵便局と農協の二つ。坂本義次村長は「今は郵便局しか金融機関がない自治体は、郵便局を指定金融機関として認められる制度に変わったが、民営化時はそうでなかったため、やむを得ず農協に残ってもらった。本音は郵便局に指定金融機関になってもらいたかった」と振り返る。

金融の共同窓口

 日本郵便の衣川和秀社長は「金融機関の支店統廃合に際し、郵便局へのATMコーナー設置や局窓口で手続事務の受け付けや取り次ぎを行うサービスのほか、局と駅の一体運営なども進めている。できる限り地域のお役に立っていきたい」と語っていた。
 日本郵便は3月、茨城県の石岡局(早瀬光夫局長)に東日本銀行の共同窓口を設置したが、6~9月にも同県内に同様に広げる予定だ。
 すでに40の地域活性化ファンドに出資し、地方創生ファンド組成のためにJPインベストメント㈱をかんぽ生命と設立したゆうちょ銀行も昨年4月、「地域リレーション部門」を立ち上げている。

求められる〝ぬくもり感〟

 坂本村長は「村内で食品や日用品を購入できる店舗がゼロに近い状態になり、しびれを切らして村が店舗を立ち上げて5年ほど。子世代が定期的に冷蔵庫に食品を届けに来るお宅も多い。カタログに印を付けて申し込む方式も実は年を取ると大変との声も聞く。村には集落が25あるが、足腰が弱くなると遠方への買い物は厳しく、近くに出向くくらいが健康にも良い。郵便局が週に1~2回買い物サービスに回ってもらえると一番喜ばれるだろう」と提案する。
 茨城県大子町も「郵便局のみまもりサービス」を全額町が負担し、17年4月に開始。19年4月からはみまもりサービス契約者に限って買い物支援を有料で提供し、生活用品などを届けるサービスも追加した。
 20年11月から包括事務受託も3局で実現できた背景には、町長のもとに足しげく通った茨城県北部地区連絡会(吉澤孝夫統括局長/日立諏訪)の旅澤雅博局長(上野宮)らの地道な行動があったが、高梨哲彦町長はその後、福井県永平寺町の「近助タクシー」(近所で助け合う意を込めたデマンドタクシー)を視察している。
 永平寺町は郵便局と連携し、買い物弱者の足となって地域を走る「近助タクシー」試行時に、すでにデマンドタクシーを始めていた他自治体首長から「市が受け付けた結果、『役所に買い物の予約を頼むのは敷居が高い』と一向に申し込みがなかった」と耳にしていた河合永充町長は、申し込みにITを使わず、住民になじみのある郵便局に電話回線による受け付けを依頼した。
 当初は2~3分の電話対応を想定していたが、実際には予約ついでにさまざまな相談や要望が持ち掛けられ、10分程度の話になってしまうことも多かったようだ。
 コロナ感染拡大前の20年2月に、内閣府の「小さな拠点×郵便局」ブロック別会議で講話した永平寺山王局の鈴木清永局長は「地元業者の方々が生き残ることが地域住民の生活支援につながる」と共創づくりに奔走している。
 高知県東部地区連絡会の宮川大介主幹統括局長(土佐山田神母ノ木:全特理事/四国局長会長)は「以前、スーパーと提携し、チラシを介してゆうパックでお届けする〝お買い物サービス〟を実施したが、食料品等は手に取って品定めしたいお客さまニーズに合致しなかった。郵便局の駐車場を利用する移動スーパーの方がニーズは高いと思う。郵便局で買い物や相談ができる形を創り上げることが大切だ」と話していた。

           金融機関が郵便局しかない地方公共団体

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