続・続 郵便局ネットワークの将来像㊺

2025.09.10

 「郵便局を活用したオンライン診療」はここ数年、実証事業や実装が着実に進んできた。人口減少やオンライン決済の普及で来局者が減る中、全国約2万4000局のネットワークが新たな役割を担い、地域貢献と収益の確保の両面で注目されている。総務省は今年度から郵便局に対して、市町村が行政サービスやオンライン診療等の住民生活支援サービスを委託する自治体に対し、初期費用の半分を特別交付税で措置する制度を開始した。

自治体費用に特別交付税措置も
郵便局の行政サービス委託

 愛媛県宇和島市で2022年(令和4年)、「スマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービス」と郵便局として全国初となる「タブレット端末を活用した遠隔医療支援」がスタート。郵便局の空きスペースを直接活用したものではないが、地域医療への関与として先駆的な取り組みだった。
 当時、宇和島市は「もはや高齢化のスピードに市の対応が間に合わない。地方都市はそうした問題ばかり。郵便局は市内の各所にスポットがあるため、理想は小さな〝困りごと相談窓口〟の拠点になっていただくこと」と展望していた。
 23年度には、総務省が「郵便局等の公的地域基盤連携推進事業」として石川県七尾市の南大吞局(池岡直樹局長)、24年度には山口県柳井市の平郡局(棟居正樹局長)、広島県安芸太田町の安野局(佐々木利之局長)でオンライン診療や服薬指導の実証事業を進めてきた。

 同年7月には、山口県周南市の高瀬局(福谷直美局長)で、日本郵便が全国初の本格実装としてオンライン診療と服薬指導を開始した(写真上)。開始から1年を経た現在も継続されている。
 山口県周西地区連絡会の福田信一郎統括局長(徳山櫛浜)は「周南市や高瀬局には、全国の自治体から非常に問い合わせや視察が多く、活字での説明も求められた。オンライン診療導入の手引きは自治医科大学が作成しているため、県は『へき地等におけるオンライン服薬指導の導入の手引き』を作成し、46都道府県に発信。高瀬局のオンライン診療は継続されているが、市民の方々の認知度は低い。医師の方の対面巡回診療を月1回から2回に増やし、先生に親しんでいただきながらオンライン診療が行える郵便局も、もう1局増やせるよう市と打ち合わせている」と話している。
 総務省の牛山智弘郵政行政部長は「郵便局の利活用が各地で進む可能性が高まる中、25年度から市町村の窓口業務や地域課題対応を総合的に実施する郵便局等に対して、市町村が行政サービス、住民生活支援サービスを委託することに伴う初期経費について、半分が措置される特別交付税措置を新設した。オンライン診療にも活用できるため、こうした制度も含めて後押ししたい」と強調した。
 厚生労働省医政局地域医療計画課は「へき地にも郵便局はあり、有用な取り組みが走り始めたと認識している。オンライン診療に関する法改正の状況も見ながら総務省とも連携して取り組みを進めたい」と語る。
 長谷川英晴総務大臣政務官も23年以前の早い段階から郵便局のオンライン診療の必要性を国会質問含めて言及されていたが、医師である自見はなこ参議院議員も日本医師会等と連携を密に強力にバックアップ。
 いんどう周作参議院議員は「医師がいない地域を中心に郵便局を拠点として活用する必要があるが、オンライン診療だけにとどまるのではなく、診療後の処方箋データを共有して高齢者のご自宅に薬を配達するサービスや、オンライン診療で健康指導を受けた方や要介護の方に適した食事のデリバリーサービスなど、分野を超えて関連サービスを拡大する柔軟な発想も大切だ」と指摘する。

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