目指すは総合物流! 日本郵便・トナミ
日本郵便グループはトナミホールディングスをMBO(経営陣が自社株や事業部門を買い取り、経営権を取得)により、TOB(非公開化する株式公開買い付け)手続きを4月10日に完了した。BtoCに強い日本郵便とBtoBが得意なトナミのシナジー、また、西日本に強いJPロジスティクスと関東・北陸・中部に強いトナミの力を合わせた「総合物流企業」へ全国ネットワーク構築を目指す。トール社との国際物流再構築も視野に入れる。(写真右から日本郵便の小池信也常務執行役員<次期社長>、千田社長、トナミホールディングスの髙田社長、創業家代表の綿貫雄介執行役員)
JPトナミグループ BtoB×BtoCで
4月16日に行われた記者会見で、日本郵便の千田哲也社長は「幹線輸送に強みを持つトナミさまと協業することで強じんな物流インフラを構築し、付加価値を創出。物流の多様なニーズに迅速かつきめ細やかなグループ一体サービス、倉庫、トラック輸送等々を可能にし、価格交渉力の強化を目指す」と意欲を示した。
トナミホールディングスから髙田和夫社長は「日本郵便さまの輸送網は強力な幹線輸送ネットワーク構築につながり、トナミと親和性が高い。一丸となって物流課題解決に取り組むことは強じんで持続可能な物流インフラ構築につながる」と社会的意義も強調した。
両社グループのシナジー戦略は①トラック輸送の特積み(特別積合せ貨物運送=不特定多数企業から出荷される荷物をトラックにまとめて積載し、全国規模で輸配送するトラック運送事業)における両社の能力を踏まえたネットワーク効率化②両社経営手法の融合、最適化等、さらなる投資による経営基盤の強化③国際物流分野の共同営業や共同購入等活用による国際物流事業やその他事業の強化――などとされる。
買収に至った経緯は、物流業界はさまざまな課題に直面し、変革を迫られる中、トナミ経営陣は上場維持のメリットが低下していると考え、非上場化の道を模索。さまざまな検討をする中で日本郵便がトナミの企業価値最大化に寄与するベストパートナーとの認識に至った。
買収価格は1株当たり1万200円、総額926億円のうち750億円は日本郵便が出資。2月27日から4月10日まで行った公開買い付けは791万6930株応募があり、成立した。
広がる強固な物流ネットワーク
【質疑応答】
――どのようなシナジーを生み、サービスに生かされますか。
千田社長 日本郵便としてBtoBの特積みはまだまだこれからだ。しかし、BtoCのラストワンマイルの配達ネットワークに強みを持つ。我々はトールも持つため、トナミさまも国際分野含めて一緒に取り組める。西日本中心に特積みを展開するJPロジスティクスも子会社として持っている。協業と幹線輸送の効率化をさまざまな投資によりシナジーを生み出していく。
髙田社長 JPロジスティクス社とも共有することでネットワーク自体がさらに強固になる。わが社は1万30社ほどの常時稼働する荷主さまがおられるので、ラストワンマイルを含めた営業提案はできる。
――大規模なM&Aはトール社以来ですね。
千田社長 トール社とは当時、コミュニケーションが困難だった教訓も踏まえ、トナミさまとはコミュニケーションをしっかり取りたい。
――目指すところは。
美並義人副社長 特積みは子会社のJPロジスティクスが主力だが、企業間物流は弱い。強化することで「総合的な物流会社」を目指したい。
――トナミ運輸とJPロジスティクスが中心軸になるのですか。
千田社長 JPロジスティクスは西に強く、トナミは日本の中央に強い。お客さまに今まで提案できなかった相互サービスを提案していける。
髙田社長 JPロジスティクスさまと〝特積み〟での幹線部分での協業。わが社はロジスティクスに重きを置いて仕事をしているが、BtoBからCへの荷物はなかなか取り扱いができない悩みがあった。そこに日本郵便の力を得られる。もう一つは海外から日本への一環輸送もさまざま取り組んでいたが、伸び悩んでいる。日本郵便のトール社さまとの協業も想定している。
(右から、日本郵便の小池常務執行役員<次期社長>、美並副社長、千田社長。トナミホールディングスの髙田社長、綿貫執行役員、髙田一哉取締役、佐藤公昭取締役)