インタビュー アフラック 古出眞敏社長

2024.06.17

 1974(昭和49)年に日本初のがん保険とともに創業したアフラックは、本年11月に50周年を迎える。アフラックが目指すのは、「生きる」を創るリーディングカンパニーだ。古出眞敏社長は「『がんに苦しむ人々を経済的苦難から救いたい』という我々の創業の想いと、『お客さまと地域を支える〝共創プラットフォーム〟』をビジョンに掲げる日本郵政グループは、互いの使命感を共有するからこそ提携も着々と進んできた」と語る。高齢化によりがん罹患者が増える中、がんの悩みをトータルで支え、誰もが安心できる人生100年時代の構築に向けて、郵便局やかんぽ生命と一緒に〝新たな価値創造〟に挑む。

戦略提携で〝新たな価値創造〟を

 ――日本郵政グループとアフラックの提携の歴史と「戦略提携」について教えてください。
 古出社長 日本郵政グループとアフラックは2007(平成19)年から提携をスタートし、翌08年に一部郵便局でがん保険販売を開始した。13年の「包括業務提携」締結を機に、全国約2万に広がる全直営局でがん保険の取り扱いを開始いただいたのが大きな節目。
 18年の「資本関係に基づく戦略提携」では、日本郵政が当社の持ち株会社「アフラック・インコーポレーテッド」に投資し、株式を48カ月以上保有し続けると議決権が10倍になる定款に基づき、議決権が20%に達した際に持分法適用を受けることなどを合意した。無事に48カ月が経過した今年、戦略提携は新たなステージに突入した。
 18年に約2700億円投資いただいたが、当時の株価は約53㌦、現在は85㌦を超えており、成長投資となった。投資後の配当も約430億円に達し、直近の23年では130億円の配当をお支払いしている。持分法適用により、さらに大きな利益が日本郵政グループの連結財務諸表に取り込まれる。
 加えて、当社のがん保険を販売いただくことで、日本郵便とかんぽ生命に販売手数料が入り、当社のビジネスも成長する。当社のビジネスが成長すれば、当社の持ち株会社の利益が増え、結果として、日本郵政グループの利益も増える。まさに〝ウィンウィンウィン〟の戦略提携だと考えている。

 ――昨年4月から協業の一環として販売を開始した「重大疾病一時金特約」や、同時に郵便局で取り扱い開始となった「『生きる』を創るがん保険 WINGS」の状況はいかがですか。
 古出社長 「『生きる』を創るがん保険 WINGS」で、郵便局のがん保険販売に勢いがつき、同時期に発売された日本郵政グループと共同開発した「重大疾病一時金特約」も成果が上がっている。
 当社の想いは、がんで苦しむ方々に対して、治療に加え、生活や仕事との両立、ご家族への支援など、経済的・社会的・精神的な不安を和らげ、支えることだ。がん保険販売だけではなく、がんの啓発やがん検診の重要性を周知する活動にも力を注いでいる。
 日本郵政グループのビジョンも、お客さまと地域を支える「共創プラットフォーム」。高齢化が進み、がん罹患者の方もどんどん増えているが、互いの使命感を共有するからこそ提携は着々と進んできた。
 約2万の郵便局ネットワークでは、かんぽ生命の「一時払終身保険」発売以降、お客さまとの接点も増えたと伺う。全てのお客さまにがんの備えもご案内いただけたらありがたい。

 ――「かんぽ生命―アフラック―日本郵便 Acceleration Program 2024」の内容と成果については。
 古出社長 1回目と2回目はかんぽ生命とアフラックの2社のプログラムだったが、3回目の今年は初めて日本郵便も参加され、主力事業領域も「保険」や「介護」にとどまらず、「郵便」や「物流」も加えてテーマ設定し、スタートアップ企業に応募をかけた。お客さまとの接点強化や営業プロモーションに関して、スタートアップ企業のアイデアやノウハウにより、新しい価値を創造したい。
 例えば、「アフラックのよりそうがん相談サポート」や、かんぽ生命とアフラックとの間で準備を進める「くらしと介護サポート」などの〝コンシェルジュサービス〟にスタートアップ企業の良いアイデアを加えたサービス開発も視野に入れている。
 7月5日の第3次選考「ピッチイベント」では、絞り込んだスタートアップ企業の社長の皆さんから話を聞き、最終選考を経て、7月後半から協業に向けて取り組みを開始する予定だ。
 昨年は100件を超える応募があり、かんぽ生命6社、アフラック6社、両社共に選んだ企業が1社の計13社を採択し、すでに8社と業務提携や共同研究を開始した。今年は日本郵便が加わったことで幅広い分野のアイデアが生み出されるだろう。全国約2万の郵便局のお客さまに新しい価値を提供する「共創プラットフォーム」実現への橋渡しになると思う。

「生きる」を創る。郵便局と共に

 ――「アフラックのよりそうがん相談サポート」を例えば、郵便局窓口でも受け付けて、アフラックさまにつなげる形はできませんか。
 古出社長 「よりそうがん相談サポート」は、アフラックのがん保険ご契約者の方を対象とするサービスで、昨年1月から一部開始し、お客さまから高い評価を受け、昨年12月からは全てのがん保険契約者の方を対象に拡大した。もちろん郵便局やかんぽ生命からご加入いただいたがん保険契約者の方も対象になる。
 昨年1月から今年3月末までで約7000件を超える相談をお受けしている。当初は1営業日20件ほどだったが、昨年12月に対象を拡大したことで、2倍の40件ほどになった。
 「アフラックのよりそうがん相談サポート」は、がんかもしれないと思った時から、がんの治療・療養中、治療後の日常生活への復帰まで、あらゆる場面でがんに関するお悩みやお困り事を、専門の相談員「よりそうがん相談サポーター」にお電話やチャットでご相談いただけるサービスだ。
 がんに関するさまざまな悩みや不安によりそい、お客さまお一人お一人が自分らしい生活や意思決定を実現できるよう、信頼できる情報やサービスをご案内している。当社のがん保険契約者であれば、どなたでも利用できるため、郵便局の窓口でもご案内いただける。
 50年前、アフラック創業の頃は、がんという病名をほとんど告知されない時代だったが、今は告知が当たり前。がん罹患者の方の話を聞くと、診断時は頭の中が真っ白になり、医師の話を受け入れられず、家族には心配をかけられない、職場で特別視されると困るなどと、自分一人で悩みを抱え込む方も多いとのこと。
 本サービスは「何でもよいのでとにかくお電話ください」とよりそい、傾聴する。ご本人は現況や悩みを話す中で、自分が何を大事にしたいのかに気付いたりもされる。安心して治療に向き合っていただくためのサービスだ。

 ――がん保険のおかげで寿命を延ばされた方は多くいらっしゃると思いますが、数字的なものをお教えいただけますか。
 古出社長 寿命がどの程度延びているかを数字で示すことは難しいが、アフラックは年間約2800億円、1営業日に約12億円のがん保険の給付金をお支払いしている。郵便局やかんぽ生命を通じてご加入いただいているがん保険だけでも、昨年は約111億円のお支払いをしている。この給付金により、治療の選択肢が増えた方も多くいらっしゃると思う。
 がんにかかる方は約2人に1人。高齢化が進み、がんになる方が増える中、備えをご案内する社会的意義はますます高まっている。郵便局の店頭にがんの知識を紹介するキットを置いていただくことも対話のきっかけになるし、自治体と提携した郵便局によるがんに関する啓発イベントも、昨年1年間に8カ所で開催いただいた。
 がん保険のご案内に加え、がん教育やがん検診のおすすめ、相談の場の提供等を引き続き一緒にやっていきたい。