〝拠点性〟を強みに「地域コミュニティー」を
日本郵政グループとJR東日本グループは2月21日、「社会課題の解決に向けた連携強化」に関する協定を締結した。日本郵便とJR東日本との協定を発展させてグループ挙げて連携し、各地域を活性化。「リアルな顧客接点」ネットワークを持つ郵便局と駅が連携し、ニーズに応じた機能を付加した「地域コミュニティー」創造により〝拠点性〟を高める動きが勢いづいている。
日本郵政G×JR東日本Gで連携協定
信越支社×しなの鉄道
2024(令和6)年度中をめどに、駅の多機能ロッカー「マルチエキューブ」にゆうパック受け取りサービスを導入。貨客混載やオンライン診療の連携も検討するほか、ゆうちょ銀行もモバイルSuicaと連動し、暮らしに便利なキャッシュレスサービスを探る。
地方鉄道初!大屋駅局開局
26日には信越支社(菊地元支社長)としなの鉄道(土屋智則社長)が連携し、地方鉄道初の「駅と一体型郵便局」となる大屋駅局(前橋正二局長)もいよいよ開局。新旧局舎の記念フレーム切手も発売された開業日は長蛇の列でにぎわっていた。
全国総駅数9465駅のうち、無人駅は4564駅(20年3月時点)。国土交通省は「鉄道事業単体で難しい運営を郵便局と共に良い形ができる形は素晴らしい」と評価している。
日本郵政G×JR東日本G
ゆうちょ口座とSuicaひも付けも検討
JRとの「駅と一体型郵便局」は運営中の内房線江見駅局と仙山線作並駅局のほか、24年度内に内房線安房勝山駅局、宇都宮線蒲須坂駅局、25年度に外房線鵜原駅局を開局予定。
両社はこれまでも個室シェアオフィス「STATION WORK」設置も進めてきたが、今回の「SOZO BOX」のほか、横浜駅東口ステーションオアシス地区の国際都市開発や、今夏の東京中央局と東京駅グランスタ丸の内店での山形県特産品展開催をはじめ、郵便局やエキナカで各地の魅力商材を販促。古民家再生の宿泊事業などでも地域の雇用創出や関係人口拡大を目指す。
増田社長は「共創プラットフォームを目指し、長期的な視野で価値創造を高め、収益と公共性の両立に挑む」と強調。深澤社長は「輸送・生活・ITのサービスを融合した力を最大化し、MaaSやSuicaを活用した〝ローカルDX〟を地域発展につなげたい」と意欲を示した。
【記者団の質問】
――両社のリアルな拠点は維持されますか。協業での課題は。
増田社長 可能な限り拠点を維持する。駅と郵便局を一体化することが維持につながる。一体化は局舎建て替えのタイミングと無人駅がある地域ニーズと合えば進められる。
深澤社長 ローカル線の問題は、鉄道が地域にサステナブルな存在か否かの視点で議論している。無人駅を郵便局に活用いただくことで、地域の方々に安心感が広がる。オンライン診療ともつなげ、広げたい。
――ゆうちょ銀行とSuicaを組み合わせたサービスとは。
増田社長 日本郵便とJR東日本は2018(平成30)年に協定を締結したが、今度はグループ全体に広げ、ゆうちょ銀行も入る。人口減少や地方の衰退の中で一体的な形は地域の方々が喜んでくださる。3~5年で成果を実現したい。
深澤社長 約1億2000万口座あるゆううちょ口座と、約2500万枚のモバイルSuicaを何らかの形でチャージできれば利便性が高まる。
――鉄道車両と郵便車両で何を集荷し、どこに運ぶイメージですか。他地域のJRとの連携は広げますか。
増田社長 電車と郵便車が同じようなダイヤの区間もあるため、共同運送のメリットがある。他JR様ともぜひ連携させていただきたい。
深澤社長 まずは「マルチエキューブ」の可能性を深めたい。郵便車と列車で大量に荷物を運ぶ実証を来年度以降、実装していきたい。北陸新幹線の沿線はJR西日本との協力を拡大したい。
信越支社×しなの鉄道 地方鉄道初
開業フレーム切手に長蛇の列!
信越支社は昨年2月にしなの鉄道と包括連携協定を締結。上田市とも2017(平成29)年に締結している。大屋駅局は駅業務だけでなく、フレーム切手販売やイベントにも活用。地方鉄道初の「駅と一体型郵便局」を祝すセレモニーに丸山徹雄主幹統括局長(松本城西)も駆け付けた。
しなの鉄道の土屋社長は「地方鉄道は人口減少や施設の老朽化で厳しい中、駅と郵便局の一体化は全国から注目が集まる」と期待を寄せた。信越支社の菊地支社長は「駅業務を含めて地域に愛される郵便局ができて良かったと喜んでいただけるよう頑張りたい」と意欲を示した。
上田市都市建設部の佐藤安則部長は「駅に郵便局機能が加わることで、多くの皆さまにご利用いただきたい」と強調。大屋自治会の矢島富士雄自治会長「地域のコミュニティーづくりに貢献いただけることを願う」と喜びを見せた。
【ミニインタビュー】
――学生の方の乗降が多い印象を受けました。
傳田彰統括局長(長野県東信地区連絡会/北御牧) 長和町と武石地域などに通う学生の皆さんが大屋駅を使う。上田方面は上田東高や上田染谷丘高、上田高、上田西高、東御清翔高、小諸方面は小諸商業高、小諸高、軽井沢高もある。
――開局時間内に帰宅する学生の方も多いでしょうね。
傳田統括局長 帰りはそうだが、朝は開局前にピークが終わるため、開局時間も考えなければいけないかもしれない。地方鉄道は利益を上げるのが難しい。過疎の郵便局に似ている。しかし、住民の方々にはなくしてはいけないインフラだ。相乗効果が上げられるよう頑張りたい。