インタビュー 全国郵便局長会 森山 真 専務理事
近年の自然災害はかつて経験したことのなかった地域でも起きている。そうした中、全国郵便局長会(末武晃会長)の森山真専務理事は「地域の実情を知る郵便局長が町会や自治会の方々と共に『地区防災計画(案)』作成や、防災訓練を定期的に実施いただきたい。地域の方々に防災意識を植え付ける役割を果たしてほしい」と強調する。
部会や地区会、会員の声に耳傾けて
――「風通しの良い組織」づくりの状況を教えてください。
森山専務理事 末武晃全特会長は就任以来、終始一貫し、全特をそれぞれが自らの意見をしっかり言える風通しの良い組織にしなければならない、と取り組んでいらっしゃる。昨年度は「全特の未来を考えるミーティング」を2回、全国約50地区会で「全特役員と地区会との意見交換会」を開催したほか、「全会員アンケート」のほか、小山薫堂氏を講師に迎えた「全特会員研修会」なども実施した。
これらは会員の皆さまとの意見交換で出てきた提案を役員会で検討し、実行したものだ。今年度も引き続き取り組むとともに、会員の思いに寄り添った新たな施策の展開も検討している。
全特活動の基盤である「部会」や「地区会」が、会員相互の敬意と信頼でつながった仲の良い組織にならなければ、強固な組織にはなれない。地方会長と地方会役員、地区会長と地区会役員、部会長の任にある方は会員の声に耳を傾け、「風通しの良い組織」づくりに懸命に取り組んでいただきたい。
――総務省が「郵便局を活用した地方活性化方策」をまとめましたが。
森山専務 我々の最大の強みは局長と社員という〝人〟が居る郵便局ネットワークによってサービスを提供することで、自治体や地元企業さま方と連携し、地域の方々の生活を支えることだ。
総務省が発表された18方策のほとんどが、地域で現場を預かる郵便局長が思い描いてきた内容と一致する。実施に向けて前向きに検討すべきだが、ボランティアなのか、手数料をいただくのか、社員増の手当てや収益面等々、個別に検証した上での判断が必要になる。
自治体の事務受託は手数料をいただいているが、自治体によっては財政的問題から事務委託をできない事情等もある。自治体に事務委託費等の財政措置を国に検討いただけたらありがたいと思う。
地域と共に、防災計画と訓練を
――局長の方の多くが防災士資格を取得されています。
森山専務 現職局長の約1万2000人が防災士資格を持ち、OBを含めると約1万8000人にのぼる。近年はかつて経験なき自然災害が多発し、大地震の発生も気掛かりだが、私を含めて皆の危機感はまだ薄いと思う。
防災士の大切な役割は防災啓発活動。災害時にどこに避難するか、避難困難者はどこに居てどのように避難させるか、ペットの扱い等々、いざという時に予測される多くの課題を地域の方々と事前に考え、決めることが大切だ。
地域の実情をよく知る郵便局長は、防災の知識が豊富な防災士として町会や自治会の方々と共に、中心となって地域の安全や安心に貢献いただきたい。まずは、町会や自治会の「地区防災計画(案)」を作成、あるいは見直すことだ。防災士である局長が中心となって防災訓練の定期的に実施するなど、地域の方々に防災意識を植え付ける役割を果たしてほしい。
宮城県の郵便局長が、幼稚園の避難訓練に同行して「ブロック塀の近くを歩くと崩れてくるから危ないよ」と言いながら誘導している記事が地方紙等に掲載されていた。心温まる素晴らしい取り組みだと感心した。
末武全特会長は、医療界や経済界、防災関係、自治体関係はじめ各界の代表が参画して、感染症と自然災害に強い社会をつくるために政府・各政党・国民各界に提言し、国民的議論を推進する目的で最近設立された「ニューレジリエンスフォーラム」の発起人に就任されている。
――「前島密翁墓前祭」に全特を代表して出席されましたね。
森山専務 浄楽寺で挙行された墓前祭には、上地克明横須賀市長や中川幹太上越市長、会社役員の方々はじめ、上越市からも多くの会員が参加され、総勢約200人の方が集まられた。運営に携わられた地元の全特会員の皆さまに心から敬意を表したい。郵政記念日式典とともに郵政の歴史と社会的価値、局長や社員の事業愛や使命感に思いをはせる良い機会になった。