全国郵便局長会 森山真専務理事インタビュー 地域とともに。地域のために
人口減少に伴い、国内のあらゆる地域がさびれていく。全国郵便局長会の森山真専務理事は「そうした状況の中で公的な役割を担えるのは純粋な民間会社ではなく、特殊会社として公的な存在である日本郵便が持つ郵便局しか有り得ない。
地域と地域住民の方々のためにもその根拠や骨組みとなる『郵政民営化法等の一部を改正する法律案』の早期成立に期待している」と話す。
また「地域がなければ郵便局は存在しない。地域住民の方々からの〝信頼〟がなければ郵便局は成り立たない。局長の皆さまには地域に溶け込み、地域に広く根を張っていただきたい。心は常に地域とともに。地域のために」と熱い思いを語る。
「郵政民営化法等の一部を改正する法律案」の早期成立を
――まずは郵政関連法案の改正に対する思いや期待をお聞かせください。
森山専務 全国のあらゆる地域で個人商店やスーパーマーケットが、ガソリンスタンドや金融機関も小中学校も、役場の支所ですら廃止され、無くなっている。そうした状況の中でも各地域に存在し続けているのが郵便局だ。
今、政府も地方公共団体も郵便局と郵便局ネットワーク、郵便配達ネットワークを地域の住民サービスに利活用することを考えておられる。この役割を担えるのは純粋な民間会社ではなく、特殊会社として公的な存在である日本郵便が持つ郵便局しか有り得ない。地域と地域住民の方々のためにもそうした役割の根拠や骨組みとなる「郵政民営化法等の一部を改正する法律案」の早期成立に期待している。
――郵便局で抱えておられる課題解決に向けての動きをお教えください。
森山専務 郵便局で抱えているさまざまな課題の解決に向けて、全特では専門委員会を中心に議論を行い、会社と協議を進めているところだ。郵便局での一番の課題は「要員不足」。
我々の提案を受けて会社は「一般職」と「地域基幹職」の統合や処遇改善等を検討し、実施してくれているが、未だ欠員補充すらままならないのが現状となっている。
全特としては以前から改善策として「郵便局窓口業務のDX化の推進」を提案してきた。窓口受付業務と検査等の後方業務を極限まで簡素化、DX化することが、お客さまサービス向上と要員不足対策の有効な手段であるとともに、余裕時間を生み出し、新たな事業を行うための要員確保に必要と確信している。早期の対応を望んでおり、時間がかかったとしても会社に要請し続けてまいりたい。
――その他の課題にはどのようなものがありますか。
森山専務 営業については来年度に向けて「分かりやすい営業方針の打出し」を協議中だ。
一方、局舎については「耐震補強、建替えの推進」、集配センターマネジメント統合関係では「統合局長等の処遇改善、負担軽減」、地域貢献・地方創生では「地公体との連携や新たな事業の展開を含めた地域への貢献や地方創生施策」等を会社と真剣に協議している最中。
全特の基本的な課題として「防犯対策」「女性局長の活躍推進」「後継者問題」などを真剣に議論している。いずれも極めて重要な課題ばかりだ。
――地域創生に対する全特のお考えをお教えください。
森山専務 地域課題解決や地域産業振興に郵便局も積極的に関わるべきだろう。今、地公体の支所廃止対応や地域住民の利便向上のために地公体からの包括事務受託に取り組んでいる。地公体の支所等が廃止される中、地域住民からは近くの郵便局で手続きができることで便利になったと歓迎されている。
総務省に予算を確保いただいたことで、過疎地の郵便局でのオンライン診療の実証事業等、郵便局を利活用するさまざまな事業の実証事業が行われている。
オンライン診療はすでに本格実施しており、地域医療にも貢献できている。
高市早苗総理大臣も「地方を伸ばし、暮らしを守る」と地域創生を提唱されておられる。各地域での課題解決や地域産業振興に郵便局・郵便局ネットワーク、郵便配達ネットワークを活用するために、地域の状況、地域の課題や地域産業の実態などを熟知する局長の皆さま方に先頭に立って取り組んでいただきたい。
全国に送り出せる特産品は何か、地元企業が面白い商品を開発していないか等々、局長が地域の魅力を探し出し、ビジネスにつなげていけば地域も潤い、郵便局も利益を得ることができる。生産が増えれば地域の雇用も増加し、全特が進める地方創生につながる。全国約2万4000局は強力な販売網にもなる。
――防災士局長の活動、活躍についてお聞かせください。
森山専務 大地震の発生可能性が高まり、台風や豪雨、豪雪災害がいつ、どこで発生してもおかしくない状況がここ数年続いているが、全特会員(局長)は約1万9000人中、約1万3000人が防災士資格を有している。
また日頃から幼稚園児の避難訓練を提案して指導したり、地域の防災訓練の企画や運営、地区防災計画の策定等々、さまざまな取り組みを局長は各地で行っており、毎年、日本防災士機構から地区単位の郵便局長会として、また局長個人が防災士功労賞表彰をいただいている。各地域の安心・安全の拠点として郵便局の存在意義を堅固なものするため、防災士としての専門知識を有する局長たちが日々、各地域で地道に活動を続けている。
――第一線の郵便局で活動されている局長の方々への思いをお聞かせください。
森山専務 地域がなければ郵便局は存在しない。地域住民の方々からの信頼がなければ郵便局は成り立たない。
局長の皆さまには地域課題の解決、地域住民の皆さまの利便性向上や安全・安心に資する地域貢献活動、地域の発展、地方産業の興隆に貢献できる地方創生活動に積極的に取り組み、活動を通して地域に溶け込み、地域に広く根を張っていただきたい。
それぞれの地域環境は異なるが、今、何をすれば地域で役に立てるかを自ら考え、行動する人材になっていただきたい。心は常に地域とともに。地域のために――。それが郵便局長のあるべき姿だ。