全年賀はがきが森林保全に貢献

2021.09.28

 日本郵政の増田寬也社長は8月31日の記者会見で「2022(令和4)年年賀はがき全て環境に優しいFSC®認証を受けた紙を使用する。生物多様性や地域社会に配慮した持続可能な自然資源活用と手紙文化の承継を推進し、お客さまと共に世界の森林保全を応援する」と強調。一方、「マイナンバーカードは将来的にさまざまな行政(自治体)サービスをスムーズに展開する基となるため、普及に協力しなければいけない」と意向を示した。脱炭素の先導役を果たし、自治体等への社会貢献性を強めながら、〝質〟の高い経営を目指していく。

増田社長会見 脱炭素と社会貢献でグループ変革

 増田社長は、日本郵便の目時政彦常務執行役員の万国郵便連合(UPU)国際事務局長選出を「重要な国際組織の事務局長にグループの人材が選出されたのは大変光栄。郵便は世界中の国と国民生活に密着した重要インフラで、維持・発展のために事務局長が果たす役割は大きい。国際物流が急拡大する中、国際ルールの整備によってスピーディーで便利なサービス提供が可能になれば、日本の国際郵便サービスの利便性向上にもつながる。培った経験を存分に活かし、精いっぱい取り組んでいただきたい」と喜びを見せた。
 22年年賀はがきの当初発行枚数は約18億3000枚(前年比94%)。グループは2030(令和12)年までにCO2を19年比46%削減する意欲的な目標を掲げているが、今後、通常はがきも順次FSC®認証を受けた紙に切り替える。会見では、内部通報制度の見直しが第3フェーズに突入することも説明された。

自信を持って取り組もう

 増田社長は「FSC®認証は、持続可能性の観点から原則に基づく規格を定め、製品を識別する国際的な認証制度。日本郵政グループは中期経営計画『JPビジョン2025』で、サステナビリティ推進に向けて温室効果ガスを削減し、環境負荷軽減を目指す」と意欲を示した。
 社員が安心して声を寄せられる内部通報制度の見直しは「9月1日以降、外部弁護士等で構成するチームが、通報をコンプライアンス経営に活用するデータ分析を行う。同日付で日本郵政コンプライアンス調査室を改組し、『内部通報制度管理室』を設置し、日本郵便含む各社コンプライアンス部門と連携を強化。今後、見直しは第3フェーズに入り①第三者評価スキーム導入②窓口担当者スキル向上③JP改革実行委員会提言を超えた施策を検討、実行する」と説明した。
 記者団の「楽天との協業状況等は」との質問に対し、「試験的に郵便局スペースを8月末までお貸しし、楽天がスマホを販売する局は何カ所か9月以降も行う。さまざまな分野で楽天と話をしている」と答えた。
 「UPU事務局長は国連の中でも故緒方貞子さんと同レベルのポストと聞くが、目時国際事務局長誕生に当たり、グループの今後の世界観や郵便局の地域観は」には「私も総務大臣時代に大会議に出席したことがあるが、UPUは歴史のある重要な組織と認識した。日本や日本郵便という立場でなく、広く俯瞰的な立場で活躍いただきたい。〝人と人〟とを手紙でつなぎ、モノを届ける郵便事業、親書等を全世界に届ける公平・公正なルール作りは社会全体の発展のためにも非常に重要だ。高い視点で臨んでいただきたい」と期待を寄せた。
 「郵便局と自治体との連携でデジタル化に貢献されたいことなどは。マイナンバーカード関連は」には「オンラインの方がより広範でお客さまサービスを提供できるため、大いに進めていきたい。自治体のさまざまなデータ等を共有して使える形になれば、利用しやすいし、郵便局も共創プラットフォームとして多くの方に使っていただきたい。自治体が地方創生や災害対応等で郵便局と力を合わせる時、地方ごとの情報格差をデジタル化で埋められると良い。総務省も概算要求(『郵便局等の公的地域基盤連携推進事業』に1億円要求)等さまざま考えてくれている。デジタル化が今後の郵便局事業につながれば幸いだ」と強調した。
 また、「マイナカード活用は政府の大きな目玉だが、十分に普及されておらず、カードとデータのひも付けも十分に行われていない。郵便局にも交付等、役割が期待されている。将来的にさまざまな行政(自治体)サービスをスムーズに展開する基となるため、普及に協力しなければいけない」との意向を示した。
 「地銀でのみまもりサービスの紹介は今後他の金融機関や、金融以外の企業等にも広げていかれる方針か」には「協力できる企業と連携し、広げていきたい。高齢者の方が増えていく中で必要なサービスだ」と指摘した。
 「金融営業に関し、郵便局窓口はどう頑張ればよいか」には「営業再開は今年4月から半年たっていない。お客さまには丁寧に、親切に、営業にとらわれるのではなく、郵便局の姿勢を見せていくことが大事な時期。乗り越え、次に向かって、私含めて全社員共に前に進んでいきたい。フロントとは可能な限り、オンライン中心だが、意見交換の場を設け、話を聞いている。さまざまなサービスに自信を持って取り組んでいただきたい」と語った。