インタビュー 全国郵便局長会 森山真専務理事

2022.11.21

 全国郵便局長会(末武晃会長)を縁の下の力持ちとして支える森山真専務理事は「もともと公的機関だった郵便局は地域の方々にとって安心感もあるため、マイナンバーカード関連業務は非常に親和性がある」と指摘する。日本防災士機構の総務理事も務める森山専務は「1万2000人強の局長が防災士。専門知識やノウハウを生かし、地域防災計画づくりの中心的な役割を果たしていけば国土と人の命を守っていける」と語る。

マイナ普及に郵便局の活用を

 ――専門委員会の構成と、その中でも特に力を入れられていることをお教えください。
 森山専務 今夏から各専門委員会が活発に動き始めている。専門委員会には、基本問題、地域貢献・地方創生、総合政策、事業改革・営業推進、集配センターマネジメント統合、置局・局舎、人事制度・人材育成の七つの委員会があり、基本問題の下には将来構想PT、人事制度・人材育成の下に中堅若手代表者小委員会が、また、続発している災害に対応するため防災PTを、来年の全特結成70周年に対応するため全特結成70周年対応PTを設けている。
 末武会長は就任当初から「風通しの良い組織づくり」を目指し奮闘されており、まずは、「コミュニケーション不足の解消」を図るために5年かけて全特役員全員が分担し、全238地区会とコミュニケーションを取ろうと意見交換を進めているところだ。さまざまな意見を聞くことができ、直接対話の重要性を私も痛感させていただいている。

 ――中堅若手局長の育成方針などは。
 森山専務 若い会員に力を発揮してもらおうと考え、将来構想PTと中堅若手代表者小委員会の局長に運営を委ねた「全特の未来を考えるミーティング」の第2回目を10月29日に滋賀県大津市で開催した。
 私たちの全特をどのような組織にしていくべきか、さまざまな意見を出し合って協議し、まとまった意見を提言という形で発表してもらった。そういった活動を通じ、同じ方向に向かって汗をかく民主的な組織にしようとしている。トップダウンでなく、ボトムアップだ。
 2名局であっても、5名局であっても、局長職に上下関係はない。役員だけで物事を決めてしまうのではなく、若手の局長の皆さんに参画いただいた上でいろいろな意見を聞き、全特の運営に生かしていくことが必要だと思う。5年後、10年後、20年後と将来を背負っていく若手局長が、仕事や地域活動に情熱を持って取り組める状況を作っていかなければ郵便局の未来はない。
 公務員出身のため、決められた仕事を滞りなく成し遂げることを得意とする人も多い。しかし、郵便局はそれぞれの地域で全て環境が異なる。局長はそれぞれの地域の大将であって、いわば経営者のような立ち位置。
 地域との交流も、経営戦略も、今何をすれば地域で役に立てるかを自ら考え、行動し、リスク覚悟で圧力に屈せず進んでいける人材になっていただきたい。日本郵政グループは人で成り立つ会社。一人一人が成長しなければ組織が成長しない。人材を育てなければ未来は拓けない。
 郵政事業には課題が山積している。今夏、コロナ禍やさまざまな圧力の中、素晴らしい結果で長谷川英晴先生を国会に送り出せたのも、局長一人一人の日頃からの地域貢献が結実したものだ。
 しかし時代の変遷とともに今後、郵便局と地域とのつながりが薄れかねない状況も考えられるので、しっかりとした〝検証〟が必要だ。いかに地域に貢献できるかを念頭に、自ら行動できる局長を育てていかなければならない。

 ――郵便局の自治体事務受託も広がっていますが、マイナカード関連の取り組みなども動きが出ているようですね。
 森山専務 自治体事務受託は地域住民の方々の利便向上と同時に、郵便局ネットワークの維持にもつながることから、地域貢献・地方創生専門委員会が本腰を入れて取り組んでいる。ただ、自治体は財政難のところが多く、郵便局もボランティアでは受託できない。そのため、末武会長は全特として、自治体が郵便局に委託する経費について何らかの国の支援が必要との要望をまとめている。
 先般、東京都も日本郵便と包括連携協定を結んだようだが、都会でも一人暮らしの高齢者が増えている。郵便局の公的なニーズは過疎地だけでなく、都心部でも今後は高まってくるはずだ。
 行政事務の中でも健康保険証との完全一体化も発表されたマイナカードの申請手続き支援は、現在、担当の局長が各自治体に説明をしており、地方創生の取り組みの中心施策として取り組んでいる。
 自治体の意向はさまざまだが、もともと公的機関だった郵便局は地域の方々にとって信頼できる存在のため、マイナカード関連業務は郵便局と非常に親和性がある。全国各地の郵便局が協力できれば、国策として進めているマイナカードの普及を後押しできる。
 過疎地等の郵便局は三事業だけでは採算が取りにくい。郵便局ネットワークと配達ネットワークを組み合わせ地域に貢献することで収益が得られれば、ネットワークの維持に加え、処遇改善や地域の雇用にもつながる。
 窓口営業時間を短縮し、残った時間で異なる仕事をすることも考えられる。収益が少しでも上げられるのであれば、失敗を恐れずどんどんやるべきだと思う。
 今、局長職は、多様な人材が増えている。社員から局長になるのも良いことだが、さまざまな経験を有し、異業種から局長になる人材も絶対に必要だ。郵政事業に新しい息吹を送り込んでくれる。局長職は転勤がないと揶揄されがちだが、地元に親しまれていれば営業にも役立つ。
 全国に送り出せる特産品は何か、地元企業が面白い商品を開発していないか等、局長が地域の魅力を探し出し、ビジネスにつなげていけば地域も潤い、その結果、郵便局も利益を得ることができる。生産が増えれば地域の雇用も増加し、全特が進める地方創生につながる。全国約2万4000局は強力な販売網にもなる。

局長は各地区の防災計画の担い手に

 ――森山専務は日本防災士機構の総務理事も務めていると伺いました。多くの局長が取得されている防災士資格を生かす方策とは。
 森山専務 毎年、局長会も日本防災士機構から1~2地区会が表彰を受けており、最近では北海道胆振地区会、千葉県中部地区会が受賞している。近年は豪雨災害等も多く、末武会長を先頭に三神一朗理事(全特防災PT座長。昭和)、そして私も被災局の激励に回らせていただいたが、被災直後の現場は泥やがれきだらけ。
 地域の局長さんたちが応援に駆け付け、原状回復に奮闘されているが、局周りだけでなく、近隣もきれいにして住民の方々から感謝されている姿に、末武会長も「うちの組織は素晴らしい」と、その活動を称賛されている。
 こうした地域貢献の一つ一つが郵便局に対する地域からの信頼を支えてきたのだと思う。現在、エリマネ局約1万9000人の局長のうち、1万2000人強が防災士の資格を有している。
 お子さんやご高齢の方、障がいのある方や妊婦さんなど被災弱者の方々を含め、いかに安全に避難できるかは、防災士としての知識と経験が生きる。資格を持った局長さんを中心に、安全かつ円滑な避難訓練ができると思う。
 先般も宮城県内の防災士資格を持つ局長が地域と連携し、保育所の避難訓練で専門的な視点から園児たちに声を掛けながら、安全な避難を誘導したという事例が新聞に掲載されていた。
 自然災害が多発する昨今、非常に大事になるのが各地区の防災計画だ。日頃から逃げ方や避難ルート、避難所の運営などを研究しておかなければ、思わぬ被害を受けたときに対応できない。
 防災士は、避難訓練や情報伝達、ハザードマップの作成等の専門知識やノウハウを持つため、防災士の局長が町や村の自治会の方と連携し防災の中心的な役割を果たしていけば、国土と人の命を守っていける。安全・安心の担い手として、各地区の防災計画づくりに防災士の資格を生かしていただきたい。