インタビュー 小方憲治 近畿支社長(常務執行役員)

2022.04.02

 郵便局数が最多の近畿支社は地域性も多種多様。昨年4月から支社長に就任した小方憲治近畿支社長(常務執行役員)は「今後、日本郵便で重要な人材育成は二つ。ソリューションを提示し、厳しい競争の中で荷物を獲得できる『郵便・物流の営業人材』と、貯蓄・投信・保険のサービスについて総合的な相談に応じられる『金融窓口のコンサル人材』の育成だ」と話す。デジタル社会が進む中、郵便局の将来を見据えた二つの人材に共通するのは〝総合力〟に違いない。自治体や企業・団体との共創においても総合力は風穴を開ける鍵になりそうだ。

物流営業と金融コンサルの育成を

 ――ご就任されてからの感想や、今後の展望などをお聞かせください。
 小方支社長 近畿は郵便局数が最多。日本海側から太平洋側、都市部から地方部、歴史的な文化を形成した大阪、京都や奈良など、非常に幅広い地域特性を持つ。中期経営計画「JPビジョン2025」の「お客さまと地域を支える共創プラットフォーム」を実現するに当たって、そうした近畿の特性を生かしながら進めていきたい。
 今年度は「郵便法改正の対応」と「新しいかんぽ営業体制の構築」の2点を柱に取り組んできた。土曜休配、送達日数の繰り下げは郵便物数減少と働き方改革要請などが背景にあるが、もっと大きな眼で見ると、社会の動きに即して「郵便から物流」へシフトする重要な転換といえる。効率的な業務運営の体制を構築し、不断にコストコントロールの努力を続ける必要がある。
 グループ挙げての「新しいかんぽ営業体制」により渉外社員がかんぽ生命に移行し、金融業務の高度化とともに、郵便局の金融窓口の在り方はコンサル的な業務が中心となる。中期経営計画にある通り、DXを活用し、先端技術やデジタル化によって業務効率化や競争力強化を図り、社員一人一人が力を発揮できる職場を作って「お客さま本位の良質なサービス」を提供する。併せてコンプライアンスの徹底や環境負荷低減を通じて社会的責任を果たし、日本郵便のブランド価値を高めていかなければならない。

 ――新しいかんぽ営業体制に向けて、どのような準備を進めていらっしゃいますか。
 小方支社長 近畿支社にはコンサルタントが拠点とする郵便局が305局あったが、今回102局に集約する。新しい営業体制の構築で最も重要なことは社員が施策の趣旨をしっかりと理解し、生命保険の営業活動に前向きに取り組める環境を作ることと、ES(社員の満足度を高める指標)を向上させることとなる。
 かんぽ生命と連携し、新営業体制に特化した「フロントラインミーティング」を社員の皆さんの不安、疑問や要望に応える形で12月~1月の2カ月間に四つのカテゴリーに分け、計178回行った。投資信託中心に扱ってきた社員には保険の基礎知識やスキルを付与し、管理者や役職者もコンサルタントを適切にサポートする「活動プロセスのマネジメント」研修も実施した。ゆうちょ銀行や提携金融の委託元会社の支援も受け、郵便局できめ細かくお客さま対応できる体制を整えている。
 訪問活動は、かんぽコンサルタントが拠点ごとにエリア設定して訪問するが、コンサルタントの活動エリアに入らない地域は、エリアマネジメント局の窓口社員が、窓口でのサービスを基本としつつ、必要に応じて局周活動も行う。グループ一体でお客さまに喜ばれる体制へ、大きな一歩を踏み出していきたい。

 ――人材育成の取り組みをお教えください。
 小方支社長 新入社員、異動して新たに業務に就く社員に十分な教育・訓練を行って育てることが基本。窓口業務、郵便・物流の集配等は業務内容もどんどん複雑化するため、こなすには時間をかけて習得する必要がある。また、個々の社員を適切に指示し、管理していくことも大変重要な機能のため、役職者や管理者の育成にも力を入れている。
 今後、特に重要な「人材育成」は二つある。厳しい競争の中で荷物を獲得できる「郵便・物流の営業人材」と、貯金や投信・保険のサービスについて総合的な相談に応じられる「金融窓口のコンサル人材」の育成だ。郵便・物流は、倉庫活用と一緒に荷物を提案するなど、荷主企業さまの抱える課題をトータルで解決するソリューションを提示できる人材育成。営業ノウハウを持つ社員も多数いるが、継続的に若手を育て、強化し、広げる必要がある。
 金融は、世の中的にATMやパソコン、スマホを通じてサービスを利用される方が増えているため、窓口で求められる業務は変わりつつある。コンサル的な機能が重要で、その人材育成とともに、業務を行えるサポートツール、例えばタブレットを活用し、お客さまへの説明を効率的に行うことなども必要になってくる。
 そのほか、例えば、郵便局運営の要となる総務部の労務担当者、郵便関係部の計画担当者の育成にもスポットを当てるプロジェクトチームを近畿支社は立ち上げている。候補者を選抜し、郵便局に配置して1年ほど研修等で業務知識を付与し、管理者と連携を図って実践力を積んでもらった上で登用するスキームだ。郵政事業は〝人力〟に大きく依存した事業。人材育成が事業の要であることは変わらない。

競争も、共創も〝総合力〟が勝負

 ――印象に残る自治体や企業との〝共創〟の動きなどは。
 小方支社長 特に印象に残る取り組みは三つある。一つは、京都市との包括連携に基づいた事業で、京友禅の手染めの絹に高台寺柄で「夢」と書かれたスマホ拭きが封筒に入った「okuruおふきmini」。昨年12月から市内217局で販売を開始した。今回は第2弾で、1年前は別の柄も販売した。コロナ禍で厳しい状況に置かれた伝統産業を支援し、売り上げの一部を市の産業振興基金に充てる地域経済活性化にふさわしい連携事業。封筒に切手を貼って一筆添えれば贈り物にもなり、手紙文化の振興につながる。
 二つ目は大阪府寝屋川市との連携。市内にある図書館で本の貸出や返却を市内郵便局でも受け付けている。2020(令和2)年に市から要望をいただきスタートしている。利用者はネットで事前予約し、郵便局で本を受け取り、郵便局のボックスで返却できるため、遠い図書館まで行かなくても済む。月100冊を超える利用があるようだが、自治体と積極的にコミュニケーションを図り、ニーズがくみ取れたのだと思う。
 三つ目の「スマートスピーカーを活用したみまもりサービス」は、近畿支社も昨年10月に兵庫県神崎郡神河町で実証実験を行った。初めて利用した平均85.7歳の方々にアンケートを行ったところ、約9割が「生活になじんだ」と回答され、手応えを感じた。自治体のニーズを聞き出し、調整し、形に仕上げるのは容易ではないことだと思うが、地域課題を解決し、互いがウィンウィンになるようさらに連携を深めていきたい。

 ――局長や社員の方々へ伝えたいことはありますか。
 小方支社長 コロナ禍にあって、郵便局のユニバーサルサービスが非常に重要なことは明白になった。エッセンシャルワーカー(生活に必要不可欠な仕事をする人)として、局長さん含めて社員の皆さんの役割が一層際立っている。社会的使命感を持って日々の業務に当たっていただいていることに感謝申し上げたい。来年度は中計2年目。共創プラットフォームの実現に向けてさまざまな施策が進む年度だ。郵便局が地域から愛され、お客さまから選ばれる存在であり続けられるよう、自信と誇りを持って各種取り組みを一緒に進めていきましょう。